ちっちゃいから感動!? こんぴら歌舞伎で地方を元気に
チケット即完売! 恐るべき香川の人気興行
香川県に二十年以上、超人気を誇る歌舞伎興行があるのを知っていますか? 気の遠くなる長い階段で知られる金刀比羅宮(ことひらぐう)のおひざ元。江戸時代に建てられた芝居小屋で、重要文化財となっている金丸座に、あるとき、有名歌舞伎役者が訪れ、伝統文化が息づく芝居小屋の素晴らしさに感動しました。このことをきっかけに、毎年、春に「こんぴら歌舞伎」が上演され続けています。しかも、たった740人収容の小屋に、毎年、全国から多くのファンが殺到。チケットをゲットするのは至難の業と言われるほどです。
実は、地方の芝居小屋の興行に人気が集まることには、地域活性化の1つのヒントが隠されています。
地方再生のキーワード、「協働」と「感動」
役者が登場すると「待ってました!」や「ナントカ屋!」などの掛け声がかかる歌舞伎。役者のみならず、そこにいる観客との掛け合いが、独自のムードをかもしだし、舞台を盛り上げます。特に、昔ながらのしつらえの小空間、金丸座には、役者と観客の間に、お互いの息づかいまでも感じながら一体となれる「協働」関係が存在しています。
空間が狭い分、観客は手が届きそうな距離で役者の表情を見てとれます。花道や桟敷など、芝居小屋ならではの構造も、役者と観客の間に相乗効果をもたらし、さらに大きな「感動」を呼び起こしています。
この協働関係と感動こそ、今、盛んに叫ばれている地方再生のキーワードです。伝統文化の再生が地方をも再生させたわけです。
互いに「育てる」関係が、終わりなき消費を生む
観客の掛け声が、さらに高みをめざす役者を育て、その高い演技力がさらなる感動を生みます。そして、その感動は、観客を「ごひいき」と呼ばれる熱狂的なファンへと育てていきます。ごひいきは、さらに歌舞伎の奥深さを学び、さらに高い満足感を得るため、ほかのファンに負けないようにと先を競います。こんぴら歌舞伎は、終わりなき消費を生む市場を育てるマーケティングのお手本のようなものと言えるでしょう。
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香川大学 経済学部 経営システム学科 教授 藤村 和宏 先生
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