3年前、30年前、300年前の日本が同居するベトナム
日本に身近な国
ベトナムは日本に身近な国の一つ、と言うと意外に感じるでしょうか? 例えば、スーパーで売られる冷凍エビや、インスタントコーヒーの原料となる豆の多くはベトナム産です。古くは安土桃山時代から交流があり、歴史的に見ても強い結びつきがあります。
日本に身近な国、ベトナムは1990年代以降、比較的順調に経済成長を続けてきました。しかし、社会主義国でありながら市場経済を取り入れているので、矛盾やひずみも見られます。日本以上に農村と都市の経済格差が生じているのです。また、ベトナムでは経済政策の一環として、観光開発が積極的に行われていますが、問題点がないわけではありません。かつての日本のように、環境負荷を考えず自然にダメージを与えるような開発が行われています。そして、少数民族が多く、その文化の紹介を観光資源としているものの、正しい姿で伝えられていないことも多いのです。さらに、正確な地図が手に入りづらい状況もあります。自然を求めて地域を歩くエコツーリズムを楽しむには、正確な地図がないと不便です。今後ますます持続的に観光を発展させるには、使える地図を整備する必要があります。
現象を「地域」でとらえる
研究者の間でよく、「ベトナムには3年前、30年前、300年前の日本が同居する」と言われます。パソコンや携帯電話など最先端の電子機器は3年前、道路や電線といったインフラは高度経済成長時代の日本とどこか似ているのです。また、ベトナムの山間農村では、日本の江戸時代の様に、今も物々交換の習慣が残っています。
高度経済成長時代の日本は、農村開発がさかんに行われていました。現在、ベトナムでも開発が進んでいますが、一方で農村から都市へ人がたくさん出ていっています。日本の教訓をベトナムで生かせるかもしれません。
時間差こそあれ、海外も日本も「地域」という視点で見ると、同じようなことが起こっています。海外のことを学ぶためには、まず日本をよく知らなければなりません。日本を知ることが、海外を知るときに役立つのです。
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鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 教授 筒井 一伸 先生
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