保育における対話研究
生まれた瞬間から始まる「対話」
私たちは、生まれた瞬間から周りの世界と「対話」を始めます。生まれて間もない0歳児であっても、おなかがすいた、抱っこしてほしい、あれを触ってみたいなど、いろいろな思いを持っています。私たち大人は、そうした子どもの思いを汲み取り、さまざまに対話しながら、その子とのかけがえのない関係を紡いでいきます。
保育は、複数の子どもたちと大人たちが共に暮らす場です。そこには、一人一人異なる人生を歩んできた人たちが集まっています。一緒に遊んだり、食事をしたりする中で、思いが通じ合ったり、ぶつかったりと、さまざまな対話が生まれます。
保育の場で生まれる対話
乳幼児期は、私たち大人のように、言語優位のやりとりをすることは難しい年齢です。言葉で話せるようになった幼児期の子どもでも、自分の思いを的確に言葉で表現できるとは限りません。
保育者は、子どもたちと日々共に暮らしながら、一人一人の心の状態を推しはかり、その子の興味・関心を推察し、保育の環境を構成したり、一緒に遊んだり、遊びが発展するきっかけを作ったり、そっと見守ったりします。
また、保育者が介在しない対話場面も興味深いです。子どもたちの声に耳を澄ませると、彼らの豊かな世界を知ることができます。いろいろな人生を生きる人たちの集まりだからこそ、そこで生まれる対話は多様で面白いのです。
保育における対話研究
保育現場で生じる対話について、0歳児クラスから5歳児クラスまでを対象に、さまざまな遊びや集まりの時間、食事など一日のいろいろな場面に着目して研究が行われています。話される言葉だけでなく、声のトーンや表情、仕草、身振り、身体の硬直や弛緩の様子など、あらゆる「声」を捉え、対話が生まれた状況や文脈も考慮しながら質的な分析が行われています。
互いの「声」を聴き合い、感情や思考を交流し、新たな意味を生み出している、その対話の在りようを研究することには、「人と人が共に生きていく」という奥深さや面白さについて考える喜びがあります。
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