身体を使って自分を表現する、演劇的手法を取り入れた英語教育

身体を使って自分を表現する、演劇的手法を取り入れた英語教育

演劇の手法を英語教育に

日本では中学校、高校、大学と継続的に英語を学んでも「英語を話すことができない」と感じる人が少なくありません。実際には、少なくとも日常生活レベルの英語は身に付けているはずなのにこのように感じる理由は、英語で話す自分への「自己肯定感の低さ」にあります。日本の英語の授業はテキストを読み、文法を理解し、語彙力を身に付けるといった点に重きが置かれます。一方、ヨーロッパなどでは演劇の手法を取り入れた英語教育法が導入されています。ロールプレイ(役割を演じること)やアクティング(演技)といった、身体を使うことを通して英語力を高めることが狙いです。

生きた言葉を届ける

演劇を取り入れる上で重要な点は、学習者が英語で何かを表現することを「楽しい」と思うことです。例えば授業では洋楽の歌詞をセリフにして表現する、といった演習を行います。学習者の多くは歌詞と重なるような経験はもちあわせていませんが、それでもセリフをしっかりと解釈・分析し、自分に落とし込んだ上で相手(観客)に届けます。このように、単なる言葉の羅列ではなく「生きた言葉」を相手に届ける演劇的な訓練は、自分を表現する喜びを見出し、自己肯定感を高めることにつながるのです。

より早い段階から

日本の英語教育のあり方については、さまざまな研究が行われています。近年、日本では小学校から英語が必修になりましたが、いわゆる「英語嫌い」が早い時期から始まるリスクも指摘されています。机に座って、頭だけで学ぶのではなく、演劇的手法を取り入れて身体を使いながら学ぶ英語教育が小学校にも普及すれば、英語が楽しいと感じる児童がより増えることが期待されます。同時に、日本の学校教育では、授業中に自分の意見を表す機会が多くありません。他人の目を気にせず、自分を表現する姿勢を身に付ける演劇的な手法は、英語学習という枠を超えて、人生のあらゆる局面に生かせる気付きをもたらしてくれるのです。

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先生情報 / 大学情報

昭和音楽大学 音楽学部 音楽芸術表現学科 准教授 野呂 香 先生

昭和音楽大学 音楽学部 音楽芸術表現学科 准教授 野呂 香 先生

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英語教育

先生が目指すSDGs

メッセージ

世界に79億人いる人類のうち、日本語話者は1億2~3千万人にすぎません。しかし17億人以上が話す英語を身に付ければ、自分の意見を伝える、あるいは意見を知ることのできる対象が10倍以上になります。また、英語ができれば、日本のニュースだけでなく世界のニュースに直接触れることも可能です。英語が得意ではないとしても、これまでとは違う視点や、これまでより視野を広げてくれる英語というツールを、ぜひ身に付けてほしいです。

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本学は礼(礼儀)、節(節度)、技(技術・技能)を身につけ、高い品性とコミュニケーション能力をもった音楽家・音楽人を養成します。教育基本法及び学校教育法にしたがい、大学では広く知識を授けるとともに、音楽を中心としたさまざまな領域に関する技能、理論及び応用を深く教授研究し、もって広い視野と高い識見を持つ人材育成を行い、短期大学部では、音楽を中心とした専門の技能、理論を深く教授研究し、実践的能力を備えた教養豊かな人材の育成をもって、いずれも文化の向上と社会の福祉に寄与することを目的としています。