書き換え可能なLSI(集積回路)で障害に強いシステムを作る
増えている製造後に設計変更できるLSI
コンピュータなどの電子デバイスにはLSI(集積回路)が組み込まれています。以前は製品ごとに設計し製造されていましたが、多品種少量生産にニーズが変化してきたことにより、開発のロスやコストを抑えるために製造後に中身を設計できる「FPGA」と呼ばれるLSIが多く使われるようになってきました。FPGAは内部がブロック化されているため、ブロック内部の論理構成やブロック間の接続関係を変えることにより、設計者が自由に中身を変更することができます。
障害から自分で復帰できる機能を組み込む
このFPGAを使って、エラーが起こった時の障害を最小限に抑えるシステム(製品)を考えています。システムが故障した時に、原因となる電子部品を見つけ出して交換するのはコストがかかりますし、そもそも宇宙空間のように人間が簡単に近づけないかもしれません。そこで、FPGAが書き換えられる事を利用してエラーが起こった時に自分で回復できる機能をあらかじめ付加しておこうという考え方です。回復のためには、正常な状態を記憶しておいて、エラー時にそこに戻るという方法(「ロールバック」と呼ばれています)を使います。これはシステムが扱っているデータを元に戻すだけでなく、FPGAの特性を生かしてシステムそのものの復元にも使われます。
LSIの一部が壊れても使い続けられる
製品を使い続けるとLSIの内部が断線、ショート、あるいは遅延を起こす場合があります。ハードウェアの故障ですが、これもFPGAなら回避できます。内部がブロック化されているため、故障箇所があった場合そこをよけて正常動作するように自分自身を書き換えます。
エラーが起こる原因はさまざまです。開発段階の設計の不備、製造時の不具合、長期使用にともなう材料の劣化、さらに宇宙線の衝突など、LSIは高集積化する中で、エラーが起こる確率は以前よりも高まっています。これをいかに回避するかは、LSIやLSIを使ってシステムを作る場合の重要な課題となっています。
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