書き換え可能なLSI(集積回路)で障害に強いシステムを作る

書き換え可能なLSI(集積回路)で障害に強いシステムを作る

増えている製造後に設計変更できるLSI

コンピュータなどの電子デバイスにはLSI(集積回路)が組み込まれています。以前は製品ごとに設計し製造されていましたが、多品種少量生産にニーズが変化してきたことにより、開発のロスやコストを抑えるために製造後に中身を設計できる「FPGA」と呼ばれるLSIが多く使われるようになってきました。FPGAは内部がブロック化されているため、ブロック内部の論理構成やブロック間の接続関係を変えることにより、設計者が自由に中身を変更することができます。

障害から自分で復帰できる機能を組み込む

このFPGAを使って、エラーが起こった時の障害を最小限に抑えるシステム(製品)を考えています。システムが故障した時に、原因となる電子部品を見つけ出して交換するのはコストがかかりますし、そもそも宇宙空間のように人間が簡単に近づけないかもしれません。そこで、FPGAが書き換えられる事を利用してエラーが起こった時に自分で回復できる機能をあらかじめ付加しておこうという考え方です。回復のためには、正常な状態を記憶しておいて、エラー時にそこに戻るという方法(「ロールバック」と呼ばれています)を使います。これはシステムが扱っているデータを元に戻すだけでなく、FPGAの特性を生かしてシステムそのものの復元にも使われます。

LSIの一部が壊れても使い続けられる

製品を使い続けるとLSIの内部が断線、ショート、あるいは遅延を起こす場合があります。ハードウェアの故障ですが、これもFPGAなら回避できます。内部がブロック化されているため、故障箇所があった場合そこをよけて正常動作するように自分自身を書き換えます。
エラーが起こる原因はさまざまです。開発段階の設計の不備、製造時の不具合、長期使用にともなう材料の劣化、さらに宇宙線の衝突など、LSIは高集積化する中で、エラーが起こる確率は以前よりも高まっています。これをいかに回避するかは、LSIやLSIを使ってシステムを作る場合の重要な課題となっています。

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広島市立大学 情報科学部  教授 市原 英行 先生

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情報工学

メッセージ

情報科学部では、社会のインフラを支えるコンピュータとネットワークの研究をしています。私の所属するコンピュータデザイン研究室では、その中でもコンピュータの信頼性、例えば、壊れにくいコンピュータとか、壊れても自分で問題を見つけて元に戻るコンピュータといった頼れるコンピュータを研究しています。この研究は単に技術だけでなく、社会が何を必要としているかも重要な研究課題になります。時代が求める信頼できるコンピュータに興味があるなら、ぜひ私たちと一緒に研究しましょう。

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広島市立大学は、広島市の都市像である「国際平和文化都市」にふさわしい大学づくりをめざして、1994年に「科学と芸術を軸に世界平和と地域に貢献する国際的な大学」を建学の理念として開学しました。
世界と地域が求める新しい時代の要請に応えるため、「国際、情報、芸術、平和」をキーワードに、特色ある教育研究活動を通じ、学術の振興と感性豊かな創造力、実践力を備えた人材を養成し、教育研究の成果を地域に還元するとともに広く世界に発信しています。