人とロボットが共存するための課題とは
ロボットには「痛み」の感覚がない
2足歩行の人型ロボットが登場するなど、より人間の生活に近い部分でロボットが活躍する時代が来ようとしています。しかし、人間とロボットが共存していくためには、まださまざまな課題があります。そのひとつが、ロボットと人間の物理的な接触において生じる主観的な感覚の違いです。例えば、人は他人とぶつかった時、お互いに「痛い」という共通の感覚を持ちます。それによって危険を瞬時に察知し、すぐに立ち止まることで、それ以上のダメージを避けることができます。しかし、ロボットには痛いという感覚はないので、人間同士のような行動メカニズムで安全を確保することが難しいのです。
痛みの仕組みをモデル化して組み込む
ロボットは、対象に加える力をすべて反力(はんりょく)としてとらえることでものを持ったり、つかんだりできます。しかし、「痛み」の感覚は根本的にこれとは異なり、力を加えていくと、ある時を境に急激に痛くなります。例えば、握手をして互いに力を加えていくことを想像すればわかるでしょう。あるいは、尖ったものが刺さった時の「痛み」は、ある狭い範囲に集中して力が加わった時に起こります。こうした痛みの仕組みをモデル化して、ロボットや機械にプログラムを組み込むことができれば、より安全・安心なシステムがつくれるはずです。
痛みの疑似命令で人間の感覚に近づく
強い力や急激な力が加わった時に、痛みと認識させるセンサーの開発も課題です。触覚と痛覚という、入ってきた力に対して人間が感じている仕組みを論理化するなどの試みが行われています。それを使って痛みの疑似命令をロボットに出すことができれば、「すぐに停止」という行動に結びつけることができます。あるいは、衝突や転倒など過去のトラブルを痛みとして記憶させておくことで、同じ状況の時には、「注意深く行動する」ようになるなど、より人間の感覚に近いロボットや機械システムの実現が期待されています。
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