有孔虫が教えてくれる、太古の地球
過去数十万年の気候が明らかに!
自然界のさまざまな物質は、地球の環境変動を克明に記録していると言われています。例えば、木の年輪なら1万年程度。アイスコア(分厚い氷を筒状に切り抜いたもの)では、グリーンランドのもので10万年前、南極のもので80万年前までさかのぼることができます。さらに、有孔虫の化石に至っては、恐竜がいた白亜紀までさかのぼることができるため、地球化学的にも優れた研究材料として注目されています。
有孔虫は原始的な単細胞の生き物で、多くは直径1mm以下、ほとんどは海に生息し、現生・化石を合わせると約25万種類が知られています。沖縄のお土産で有名な「星の砂」も、実は有孔虫の一種です。現在、この有孔虫の化石を海の底から取り出し、過去数十万年の地球の気候の変動を調べる研究が進んでいます。
有孔虫の化石が歴史を語る
海中に生息する有孔虫は死ぬとゆっくり海の底に溜まり、年輪のように古いものから新しいものへと蓄積されていきます。そこで海底にパイプを突き刺して筒状に有孔虫の化石を取り出し、過去の海底環境やその時代の気候を調べるのです。有孔虫は炭酸カルシウムの殻を持っているため、その殻を構成する炭素と酸素の組み合わせが古環境を調べる有効な手がかりになります。
酸素の同位体組成でわかる氷期と間氷期
酸素の同位体は16から18までの3種類あります。水蒸気中にある重い酸素同位体18は雨になって地表や海に降り注ぐ一方、軽い酸素同位体16は大気中に残りますが、氷期になって氷床が成長するときには、氷床に蓄積されていきます。そのため氷期の海水中の酸素同位体18の割合が増えるため、暖かい時期の間氷期に比べると酸素同位体18の割合が0.1%程度大きくなります。酸素同位体の変動は、その時代に生きる有孔虫化石にも反映されるため、有孔虫化石の酸素同位体比の大きい時代が氷期、小さい時代が間氷期となります。つまり、私たちの知らない太古の地球を、小さな有孔虫で垣間見ることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 環境共生学科 教授 大串 健一 先生
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