地球環境の変動を探るミランコビッチサイクル
氷期と間氷期は交互にやってくる
地球の気候が長期にわたって寒冷化する「氷河期」は、南極や北極の氷床、山地の氷河が発達する時期のことです。氷河期の中の寒い時期を「氷期」、暖かい時期を「間氷期」と言い、現在はその「間氷期」にあるとされています。過去260万年間は、氷期と間氷期が交互にやって来ています。
さらに、この氷期・間氷期は一定のリズムで起こっているとされています。その原因をセルビアの地球物理学者M・ミランコビッチは、地球が受ける太陽放射量の変化に求めました。「ミランコビッチサイクル」と呼ばれるもので、北半球高緯度の夏季日射量が減少すると氷期になり、日射量が増加すると間氷期になると考えられています。
太陽の放射量が影響?
1930年、ミランコビッチは太陽放射量の変化に影響するものの要因として1.地球の自転軸の傾き 2.地球公転軌道の離心率 3.歳差(さいさ)運動の3つを挙げました。自転軸の傾きは23.5度と言われますが、地軸の傾きは4万年周期で22.1度~24.5度の間を変化しています。また、地球が太陽の周囲を公転するとき、軌道は真円でなく楕円で、その離心率(楕円など円錐曲線を決める定数)は、10万年周期で変化します。さらに、コマの回転が弱まると軸が傾き首を振るように円形を描く歳差運動で、地球の自転軸の方向は、約2万年で一周します。これらのことがらから地球への季節ごとの日射量は、たとえ太陽放射量が一定であったとしても、数万年から数十万年の間で変化することになると考えたのです。
ミランコビッチ説を実証する化石
しかし、このミランコビッチの説も1960年代まで証明されるものがなく、一時は廃れかかっていました。ところが、1970年代に海洋底のボーリング調査が行われ、そこで採取された「有孔虫(原生動物に属する生物)」の化石から得られた情報が、ミランコビッチの出した変動周期に近いものであることがわかり、現在では彼の説が再び見直されることになったのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 環境共生学科 教授 大串 健一 先生
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