小さな化石からひも解く、過去の地球の姿

有孔虫は語る
「星砂」は沖縄のお土産などでよく知られています。これは実は砂ではなく、「有孔虫」という生物がつくる殻です。有孔虫は大きさが1ミリメートルにも満たない単細胞生物で、底生生物である「底生有孔虫」とプランクトンである「浮遊性有孔虫」がいます。海底の地層に含まれるそれらの化石は、過去の地球の環境を知る大きな手掛かりとなります。生息する海の水温が暖かいか冷たいかによって、有孔虫の形が異なるためです。
海底の堆積物は、平均すると1000年で約1センチメートル積もります。海底の堆積物を掘って採取し、有孔虫の化石の形を顕微鏡で調べることで、過去の地球の海の温度変化がわかります。また有孔虫の形は時代によっても違うので、年代の指標にもなります。
海水の酸素同位体比
形の分類に加えて、化石の化学的な分析も環境を知るために役立ちます。有孔虫の殻を構成する炭酸カルシウム内の酸素の同位体比から、当時の水の情報が得られるのです。酸素16の海水は酸素18の海水に比べて軽いので、蒸発して氷床(地表を覆うほどの巨大な氷塊)に取り込まれやすい傾向にあります。そのため、寒く氷の多い時代ほど、海水の同位体比は大きくなります。
南極の海の変化を調べる
南極大陸の周りには「南極周極流」と呼ばれる時計回りの強い海流があり、低緯度の海からの熱の侵入を妨いでいます。周極流を境にその北側の水温は20度前後であるのに対し、南極側は4度程度しかありません。この温度差は、北から南に徐々に生じているのではなく、流れの中にある「前線」を境にして急激に変化します。そのため、周極流の海底から試料を採取して、地層ごとの有孔虫の化石の形の分類や化学分析を行うことで、その採取地点がそれぞれの年代で前線のどちら側にあったのかを知ることができます。
過去80万年のあいだ、地球は10万年くらいのサイクルで氷期と間氷期を繰り返し、それに伴い南極の氷も増減してきました。周極流の前線の変化もそれに対応しているのか、調査が進んでいます。
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秋田大学国際資源学部 国際資源学科 資源地球科学コース 助教松井 浩紀 先生
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