講義No.08678 地球科学

開発途上国の防災システムから日本が学ぶこと

開発途上国の防災システムから日本が学ぶこと

多くの人命が助かった「ソロモンの奇跡」とは?

2013年、オーストラリアの東のソロモン諸島で、マグニチュード8の地震が起こり、3分後には津波が来襲し、10人が犠牲になりました。日本の例を見ると、地震の3分後に津波が襲った北海道南西沖地震では100人以上の犠牲者が出ています。単純な比較はできませんが、防潮堤もない、緊急の防災情報システムもない、開発途上国の島国でなぜ、犠牲者が少なくて済んだのか、この事例は「ソロモンの奇跡」と呼ばれて、詳しい調査が行われました。

地震多発地帯で昔から培われた防災意識

ソロモン諸島は、日本同様環太平洋造山帯に位置し、太平洋プレートとオーストラリアプレートが接する境界上にある地震多発地帯です。住民は、自然への畏敬の念が強く、昔からの伝承を信じて地震が起きたら高台に逃げるという行動を日常的にとってきました。さらに、地域の人々の結びつきが強く、避難できない高齢者や小さい子どもは、成人男性が助けるということが自然に行われていたのです。避難後に飼っていた豚を逃がそうと家に戻って犠牲になった女の子の痛ましい例もありましたが、多くの人々は自らの行動で身を守ることができたのです。

構造物に頼らない災害対応力の高さが鍵

津波で島内家屋の72%が流失、倒壊したネンドー島を調査したところ、地震の数日前に、「東日本大震災」の映像が上映され避難路が確認されていたことがわかりました。この地域で大きな津波が来たのは、100年以上前なので、実際に津波を経験した住民はいなかったのです。しかし、祖先からの伝承と、ビデオによる啓発活動で、より徹底した避難行動が取られました。
島には津波避難タワーも防潮堤も、緊急情報システムもありません。しかし、人的被害軽減に特化した防災意識が多くの命を救ったのです。ソロモンの奇跡は、ハードや情報など、ハイテクに依存するのではなく、守るべきは人命のみ、という防災意識を持つことが重要だということを示唆しています。

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先生情報 / 大学情報

福島大学 人間発達文化学類  教授 中村 洋介 先生

福島大学 人間発達文化学類 教授 中村 洋介 先生

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自然災害科学

メッセージ

高校時代は、直接進路に結びつかなくても、スポーツでも好きな勉強でも、とにかく興味のあることに積極的に取り組んでください。防災の分野で社会貢献したいと考えている人は、そうした豊かな体験が先々、自分の力となります。
私は、小学生の頃から大学時代までずっと剣道をやっていました。その経験は瞬時の判断力や、危険回避の能力として災害現場の調査でも役立っていると思います。多くの先輩が行政やコンサルタントなどで防災の専門家として活躍しています。ぜひ、私たちといっしょに学びましょう。

先生への質問

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「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。