地磁気のN極とS極は、500回以上も逆転していた!?
「チバニアン」は、何がすごい?
地球には地磁気があり、岩石や堆積物には過去の地磁気が記録されています。それについて研究する学問を「古地磁気学」といいます。地磁気の様子は大きな棒磁石が作る磁場に例えられ、そのN極とS極は過去1億7千万年間に500回以上も反転(逆転)してきたことが判明しました。いきなりグルッと反転するのではなく、約77万年前に起こった最近の反転は、約1万年間かけて起こっています。しかも反転する前に、地磁気の強度は今の1/10程度に弱まり、反転が終了してから再び強度が回復することがわかってきました。そうした地磁気の逆転途中の様子が最も詳細にわかる地層が千葉県市原市にあり、約77万4千年前~12万9千年前の地質時代が「チバニアン」と命名されています。
地磁気の強さは変動している
地磁気のおかげで、地球上の生物や人間の文明活動は太陽風の影響から守られています。現在の地磁気の勢力圏は、地球の中心からおよそ6万4千kmですが、もし地磁気の強度が弱くなると、勢力圏の範囲が狭まると見積もられています。ただし、地磁気によるシールドそのものは機能しているので、生物への影響は限定的と考えられています。また過去1億年ほどの地磁気の強度の平均は、現在の50~60%程度だとわかってきました。つまり地球の長い歴史の中では、今は地磁気の強い時代なのです。
地磁気の逆転途中で起こると考えられる現象が、多数の磁極の発生です。磁極には磁力線が集中し、オーロラの発生を誘引します。世界各地で多数のオーロラが観測できると考えられています。
年代測定にも利用
最近、過去の地磁気の記録と年代との関係が定義づけられてきています。それにより、これまでの岩石や堆積物に加え、土器やかまどといった考古遺物を対象に、それらの年代測定手法の一つに利用されています。磁性鉱物を含む物質は、焼かれるとその当時の地磁気を記録するので、形成された年代がわかるからです。目に見えない磁気は、自然の生き証人として確実に歴史を刻んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 理工学部 地球環境防災学科 教授 山本 裕二 先生
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