日本の海は冷たくなってきている? 化石でわかる海洋環境変動
プランクトンの化石から海の環境を探る
化石を調査し、海洋環境変動を探る研究が行われています。地層に含まれる化石を調べると、その生物が生存していた時代の環境を知ることができます。例えば放散虫(ほうさんちゅう)の化石です。放散虫はプランクトンの一種で世界中の海に生息し、さらに種類が細かく分かれています。古い時代から生息しており、球形、円盤状、らせん状、タケノコ型など環境によってさまざまな形や大きさに進化してきました。そのため放散虫の種類から地層ができた時代を突き止め、過去の海洋環境変動を知ることが可能です。
日本近海は寒冷化している?
この研究が進み、日本周辺や北太平洋では過去にさかのぼるほど水温が高くなることが明らかになりました。研究対象となったのは1600万年前までの時代です。いくつかの年代に分けて水温を比較した結果、1600万年前の海が最も温かかったことがわかりました。山形県周辺の海も、1600万年前は現在の九州南部や沖縄の海と同じくらいの水温でした。つまり長い目で見ると、現在にかけて海は寒冷化してきたといえるのです。
ただし海の水温は常に一定の速度で変化しているわけではありません。あるときは急に低くなり、あるときは水温が変わらないなど、変化には波が見られます。また、日本周辺の海洋環境は、離れた場所の気候が変化したときにも影響を受けたと考えられています。例えば南極で氷河が大規模に発達した時期は、遠く離れた日本の海でも水温が下がった可能性があります。
温かいと放散虫の種類が多くなる?
海の環境が変わると、放散虫の多様性にも変化が見られます。水温が高いときは種類が多く、低くなると種類が減っていく傾向があるとわかってきました。多様性が変化する直接的な理由は明らかになっていないため、さらに分析が必要です。また、この放散虫の変化はまだ北太平洋の一部海域でしか確認されていないため、世界的な傾向を知るために調査範囲を広げることも求められています。
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山形大学 理学部 理学科 地球科学コースカリキュラム 教授 本山 功 先生
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