土は地球の貴重な資源~地球温暖化をくい止めるために土壌を守る~

土は地球の貴重な資源~地球温暖化をくい止めるために土壌を守る~

環境問題には土壌が関わっている

地球温暖化の要因として、CO₂(二酸化炭素)排出量の増加が指摘されています。18世紀半ばの産業革命以降、人間は石炭や石油など化石燃料を燃やしてエネルギーを得てきましたが、その活動によりCO₂排出量は増え続けています。大気中のCO₂濃度が上昇すると、温室効果が高くなり、地球温暖化は進んでしまいます。実は、このメカニズムに、「土(土壌)」が深く関わっているのです。

土壌は植物の3倍のCO₂を蓄積

大気中のCO₂は、光合成によって植物に取り込まれます。やがて植物が枯れて落ち葉などが地面に落ちると、微生物の活動によって一部は大気に戻りますが、植物が取り込んだCO₂の多くは、分解後の「腐植」に有機Cの状態で土の中にとどまります。腐植とは、土を掘り返すと現れる黒っぽい有機物のことです。腐植物質に貯蔵されたCも、いずれ微生物が分解することで、再び大気中にCO₂として放出されます。このように、CO₂は「大気」「植物」「土壌」のあいだを循環しているのです。土の中の腐植にとどまっているCの蓄積量を調べると、大気の2.5倍、植物の3倍もあることがわかりました。

大地は悲鳴を上げている

砂漠化や塩害、砂嵐などで土壌が浸食されています。また伐採や焼畑、酸性雨などで森林が破壊され、そこに雨が降り土砂が押し流されることでも、土壌は失われています。ツンドラでは温暖化で乾燥が進み、山火事が頻繁に起こっています。
土壌には、大気や海、植物と並んで、地球上のCO₂バランスを保つ役割があります。土壌が減少すれば、CO₂発生の元となるCをとどめておくことができなくなってしまいます。すると大気中のCO₂濃度が高くなり、気温も上昇します。そうして微生物の活動が盛んになると、土の腐植を分解するスピードが早くなっていきます。つまり、いま地球は、温暖化が進む「負のスパイラル」に陥っているのです。土は地球の貴重な資源です。地球温暖化を止めるには、土壌を守ることが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 教授 藤嶽 暢英 先生

神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 教授 藤嶽 暢英 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の専門は、「土壌学」です。文字通り「土」を相手に、主に化学的な成分を分析しています。土壌学の分野では、実際に自然の中にでかけて、植物や水環境の専門家らと一緒に調査を行います。広いフィールドを対象にするため、複数の大学と協力しながら研究を進めるのが特徴です。
化学や、仲間と汗を流して研究するフィールドワークに興味があるあなたを待っています。ロマンチックな心があれば、なおのこと大歓迎です。複雑な自然現象を少しでも理解しようと一途(いちず)になれるのは、ロマンチストしかできないことだと思うからです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。