「子宮頸がん」は予防できる

「子宮頸がん」は予防できる

原因はウイルス

子宮は洋なしを逆さにしたような形をしています。赤ちゃんが育つ部分を「子宮体部」、その下の膣(ちつ)へと繋がる細い部分を「子宮頸(けい)部」と言います。「子宮体がん」「子宮頸がん」はそれぞれの部位にがんができますが、全く違う病気です。子宮体がんは、女性ホルモンなどが原因の50代に多いがん。子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因の30~40代に多いがんです。
HPVは一度でも性経験のある人なら誰でも感染の可能性があるウイルスです。しかし、HPV感染の多くは一過性で、仮に感染したとしても、子宮頸がんになる確率は0.1%程度であることがわかっています。ところが近年、20歳代の子宮頸がん患者が急増しています。原因は初交年齢の若年化と、子宮頸がん検診受診率の低さです。2006年の統計で、アメリカの検診受診率82.6%に対し日本はわずか23.7%と、先進国の中で最低なのです。

細胞診によるがん検査

子宮頸がん検診では、ごく初期で自覚症状のない段階のがんでも発見することができます。子宮頸がんは、ウイルスに感染してからがんになるまで、平均6~10数年かかる進行の遅いがんであり、ごく初期なら子宮を残して治療することが可能です。ですから、定期的に子宮頸がん検診を受けることは非常に大切です。
子宮頸がん検診は20歳以上の女性を対象に、各自治体や病院などが実施しています。検診では「細胞診」が行われます。ブラシなどを用いて子宮頸部の細胞を採取し、スライドガラスに塗布・染色した後、細胞検査士が顕微鏡で調べる検査です。

予防ワクチンが承認された

子宮頸がんに関する現在の最大のトピックスは、HPV感染を予防するワクチンが2009年に国から承認されたことです。欧米では公費による集団接種が始まっていますが、日本ではまだ自治体によって対応がまちまちです。子宮頸がんはワクチン接種で予防ができるがんと言えます。また、定期検診での細胞診も併用することで、100%の予防に近づけることが可能なのです。

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先生情報 / 大学情報

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 臨床検査学科 教授 則松 良明 先生

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 臨床検査学科 教授 則松 良明 先生

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臨床検査学 臨床病理学 外科病理学

メッセージ

日本人の死亡原因第1位であるがんの細胞や、病気に関連する細胞、病原体などを顕微鏡で見て発見する検査を細胞診と言います。細胞診はがん細胞の早期発見をはじめ、いろいろな病気の診断と治療に役立っています。
細胞検査士は、細胞診でのスクリーニング業務を担当する臨床検査技師です。ひとくちに細胞と言っても多くの種類が存在し、それぞれ特有の“顔”があります。細胞検査士は病気による細胞の“顔”の変化を見逃さず、例えば、がん細胞なのか、がん細胞とよく似た良性細胞なのかを的確に探し出すスペシャリストです。

愛媛県立医療技術大学に関心を持ったあなたは

愛媛県立医療技術大学保健科学部は、看護学科と臨床検査学科の2学科で構成されています。4年間の大学生活を通して、人としての豊かさ、保健医療専門職としての倫理観、専門分野の知識・技術、自ら考え行動する実践力などを培うとともに、卒業後の活動においても、常に将来を見据え社会の変化や保健医療の進歩に的確に対応できる主体性や課題解決能力を身につけて欲しいと考え、教育目標やカリキュラムを編成しています。
人々の健康生活に関心のある方々、社会に貢献できる保健医療専門職を目指してぜひ本学の門をたたいてください。