小さな赤ちゃんが失明するのを防ぎたい
子どもの主な失明原因となる未熟児網膜症
現代は医学が発達し、予定日よりも数カ月早く産まれた未熟児の命も助けられるようになりました。ただ、未熟児はその名のとおり体のいろいろな部分が未成熟で、それが病気につながることもあります。
その一例として挙げられるのが、「未熟児網膜症」です。網膜は、眼の奥にある部分で黒目から入った光を感じる役割を果たしています。この網膜に栄養を行き渡らせる血管が早産児ではできあがっていません。そのため、生まれた後に完成するように血管を伸ばさないといけませんが、何らかの理由で血管が本来の育つ向きと違って網膜を離れて成長してしまうことがあります。この血管の異常な成長があると眼のなかに血がでたり、網膜剥離になって失明することがあります。もし血管の伸びる方向をコントロールして正常な血管に育てることができれば、病気が治る可能性が見えてきます。
治療の後に視力がよくなるとは限らない
しかし今のところ、この異常な血管をコントロールする方法は見つかっていません。「この方向には行くな」と命令する分子、「この方向に進め」と促す分子が見つかってきていますが、これらは血管の外から指示する要素です。一方で、血管側の「そっちに行くよ」を決める要素もあります。自在に血管を伸ばすには、これらをどう使うかが課題です。最近、異常な血管を抑える薬物が開発され、未熟児網膜症の赤ちゃんの眼に注射で薬を入れる治療がされています。この治療は正常な血管を育てるものではなくベストな治療とは言えません。治療して失明を防ぐことはできても、良い視力を得られるとは限らないのです。
進歩する眼の血管に関する研究
とはいえ、眼の血管に関する研究は徐々に進んでおり、異常血管の伸びる向きを制御する方法も確立されようとしています。将来的に新薬が生まれて、正常な血管をつくることができれば、後遺症のない治療になるでしょう。未熟児網膜症に効く薬は、そのほかの大人の眼の血管におきる病気の治療にも効果を発揮するでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。