講義No.14768 看護学

看護師が患者に掛けるブランケットの意味

看護師が患者に掛けるブランケットの意味

プライバシー保護は看護スキルの一つ

患者が身体を清潔に保つための看護ケアを受けたり、院内を車いすやストレッチャーで移動するとき、看護師は患者の体にブランケットをかけます。保温の役割はもちろん大切ですが、理由はそれだけではありません。ブランケットには「患者のプライバシーを守る」という重要な役割があります。
入院中の患者は診察や検査のため、パジャマのまま院内を移動することがよくあります。そのようなとき、患者の体が人目にさらされないように、上着を着るようすすめたり、ブランケットをかけたりします。それが患者のプライバシーと尊厳の保護、そして患者の安心感につながります。プライバシー保護は基本的な看護スキルの一つです。

ブランケットの効果とは

看護の際のブランケット保護が心身にどんな影響を及ぼすのかを科学的に調べた研究があります。被験者にブランケットがある状態・ない状態で、心電図などの測定を受けてもらい、それらの変動を解析することで自律神経の活動から緊張しているか・リラックスしているかを調べるというものです。実験の結果、ブランケットがあるほうがリラックスする、つまりブランケット保護には、ケアを受けるときの心理的緊張をほぐし、安心感をもたらす効果があることが明らかになりました。

安心して個人的な情報を提供してもらうために

看護師にとって患者のプライバシーを守ることは、一人一人に合った個別的な看護を行うためにも重要です。プライバシーが守られていると感じた患者は、看護師を信頼し、安心してプライバシーにかかわるような個人的な情報を提供するようになると考えられるからです。患者が看護師に提供する情報には、過去にかかった病気や現在の症状のほか、普段の生活のようすや価値観、病気に対する考え方なども含まれます。これらが必要に応じて提供されなければ、患者を十分に理解することも、その人に合った質の高い看護を行うことも難しくなります。プライバシーに配慮した看護スキルは、基礎看護学における大切な学びなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 看護学科 基礎看護学講座 教授 徳永 なみじ 先生

愛媛県立医療技術大学保健科学部 看護学科 基礎看護学講座 教授徳永 なみじ 先生

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看護学、基礎看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

病院へ行ったとき、優しい看護師さんにケアしてもらいたいですよね。では、どんな人が「優しい」のでしょうか。ニコニコと笑顔で接することだけが優しさではありません。例えばプライバシーや人権に配慮できることも大切です。本当の優しさについて自分なりに考えてみると、看護師の仕事の中身が見えてくるでしょう。看護師は献身的な仕事だと思われがちですが、自分の心身が健康であってこそ適切に人をケアできるのではないでしょうか。誰かをケアするために、まずは自分の心と体を大切にできる人に看護の仕事は向いていると思います。

愛媛県立医療技術大学に関心を持ったあなたは

愛媛県立医療技術大学は、看護学科と臨床検査学科の2学科で構成されています。大学生活を通して、人としての豊かさ、保健医療専門職としての倫理観、専門分野の知識・技術、自ら考え行動する実践力などを培うとともに、卒業後の活動においても、常に将来を見据え社会の変化や保健医療の進歩に的確に対応できる主体性や課題解決能力を身につけて欲しいと考え、カリキュラムを編成しています。
また、看護学科卒業後の進路として助産学専攻科(1年制)を併設するなど、地域の保健医療福祉に貢献できる人材の育成に努めています。