健康診査のビッグデータ分析で住民の健康度アップへ

健康診査のビッグデータ分析で住民の健康度アップへ

健康に関するビッグデータを活用

国民健康保険加入者の診療や健康診断の結果を、データベースとして研究に活用する「国保データベース(KDB)」という制度が、2013年から始まっています。従来、郵送アンケート等で行われていた地域住民の健康と生活習慣の関連の調査を、現在ではKDBにより簡単に行えるようになりました。
例えば、体内の総コレステロール値は、中年期以降に上がりやすいことは知られていました。KDBを出生年代別で分析したところ、食生活の洋風化で脂質を多く摂るようになった1980年代以降に生まれた人は、洋風化があまり進んでいなかった1970年代以前に生まれた人と比べると、コレステロール値が上がる年齢が早く、上がり方も急であることがわかりました。

「わが事」と感じられるような情報提供

分析結果をただ公開するだけでは、人々の健康意識を高めることはできません。大切なのは、「わが事」と感じられるような情報提供方法です。
愛媛県では、KDBと全国健康保険協会から提供されるデータを合わせた年間約20万件の健診データを、小さなエリアに分けて分析しました。その結果、伝統的に甘辛い味つけが好まれる地域では血糖値や血圧が高く、お酒を飲みながらの「寄合い」が多い地域では肝機能が悪いなど、文化や習慣に関連した顕著な違いが明らかになりました。このように自分たちの生活との関係が示されることで、初めて「わが事」になるのです。

地域の実情に合った健康教育

こうした結果は、自治体の保健師などを通じて地域の健康教育に役立てられます。地域の実情をよく知っているため、住民への伝え方も工夫できるのです。例えば、都市部の会社員の多い地域では、数値を明示して説得力を高めた資料をつくります。また、農業や漁業で住民の結びつきが強い地域では、リーダー的な存在に働きかけることで、地域で健康増進活動が始まった事例もあります。
このように、ビッグデータを住民の健康増進の行動に結びつけるためには、分析方法や情報提供方法の研究が不可欠と言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛県立医療技術大学 保健科学部 看護学科 地域・精神看護学講座 准教授 入野 了士 先生

愛媛県立医療技術大学保健科学部 看護学科 地域・精神看護学講座 准教授入野 了士 先生

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地域看護学

メッセージ

地域の健康増進を進める活動で、地域住民の方と関わる時間はとても意義のある経験です。学生と一緒にデータの分析結果を地域の方に伝えて、健康増進対策の提案をする機会がありますが、学生の言葉で普段見慣れている自分たちの地域の特徴、強みが語られることで、初めて気がついたという方も多いです。それをきっかけに、新たな取り組みが始まったり、健診の数値がよくなったりと変化を実感することが楽しく、学生にとってもやりがいにつながっているようです。あなたにも、そんな喜びをぜひ味わってほしいです。

愛媛県立医療技術大学に関心を持ったあなたは

愛媛県立医療技術大学は、看護学科と臨床検査学科の2学科で構成されています。大学生活を通して、人としての豊かさ、保健医療専門職としての倫理観、専門分野の知識・技術、自ら考え行動する実践力などを培うとともに、卒業後の活動においても、常に将来を見据え社会の変化や保健医療の進歩に的確に対応できる主体性や課題解決能力を身につけて欲しいと考え、カリキュラムを編成しています。
また、看護学科卒業後の進路として助産学専攻科(1年制)を併設するなど、地域の保健医療福祉に貢献できる人材の育成に努めています。