スーパーコンピュータはどんなことに使えるのか
長い目で見れば大きなメリットが
2009年秋、民主党政権による事業仕分けにより、一躍注目を浴びたスーパーコンピュータですが、何に使われるかはあまり議論の対象になりませんでした。このスーパーコンピュータは、普通のコンピュータを8万台並列した能力に相当したもので、1台なら200年かかるような計算も1日で終える処理速度を持っています。普通に生活するだけなら、これだけの性能は必要ありません。しかし、複雑かつ膨大な計算を必要とする薬の開発などでは非常に効率的に処理できるようになり、長い目で見るならば、人間の生活に大きな恩恵をもたらすと言えるのです。
医学分野への応用
今後は新薬開発から一歩進み、医学分野でもスーパーコンピュータが大きな役割を果たしていくと考えられています。投薬した薬が体にどのような影響を与えるのか、シミュレーションにより事前に予測できるようになるからです。これにより、投薬を繰り返す手間やリスクは間違いなく少なくなります。また、まだまだ未知の部分の多い人間の各臓器の機能なども、スーパーコンピュータを使うことで明らかにしようという研究が行われています。
スーパーコンピュータが環境問題を解決?
こうしたシミュレーションは、近年課題となっている環境問題にも使われようとしています。例えば、大気汚染の原因とされるNOX(窒素酸化物)です。これらは排気ガスにより生み出されるとされていますが、詳しい過程はよくわかっていません。そのため、まず作られる過程を人為的に構築し、さらに止めるためにはどうしたらいいか、分解するにはどうしたらいいか、触媒に適した物質を考えていく必要もあります。とはいえ、地域による気候の違いや紫外線の影響など、大気中にはさまざまな物質が混在していることから、現在は、まだシミュレーションをするまでには至っていません。近い将来はそれも可能となり、スーパーコンピュータが環境問題の解決にも一役買うことになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 理学部 理学科 教授 立川 仁典 先生
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