ストレスから働く人の健康を守るには

労働環境の変化と健康問題
日本の労働者の健康問題は、時代とともに変化してきました。戦後の復興期には、建設業や製造業での事故やけがが大きな課題でした。しかし、1970年に労働安全衛生法が制定されて安全対策が強化されると、労働災害は次第に減少しました。
一方で産業構造の変化により、新たな課題が生まれました。サービス業の割合が増えて、現場労働からオフィスワークへと働き方が変わる中で、身体的なけがよりもメンタルヘルスの問題が増えてきたのです。
ストレスの原因は「役割」にある
現代の労働者が抱えるストレスは、仕事での役割から生じるものが少なくありません。正社員にもアルバイトにも、決められた時間に働いて、期待された役割を果たすことが求められます。しかし、その役割をうまく遂行できなかったり、長く続けるのが難しくなったりすると、心身に悪影響を及ぼします。また、こうしたストレスは、自覚していても言語化しにくいことがあります。そのため、国が進めるストレスチェック制度などを活用し、ストレスに気づき、ストレスに対処する取り組みが進められています。
やりがいとストレスとのバランス
近年、ストレスを単に軽減するだけでなく、やりがいも高めることの重要性が指摘されています。やりがいを感じることで、働くことへの満足度が高まり、メンタルヘルスの向上につながります。これを「ワーク・エンゲイジメント」といい、仕事に対して意欲的に取り組める状態を指します。その一方で、やりがいを理由に過剰な労働を強いる「やりがい搾取」の問題も懸念されています。楽しい仕事でも、無理をしすぎると心身に負担がかかるため、働きやすい環境を整えることが大切です。
また、産業医や衛生管理者に加えて、公認心理師・臨床心理士などの専門家が職場の健康管理に関与するケースも増えています。ストレスチェックの実施や管理職向け研修、職場環境の改善への取り組みを通じて、個人だけでなく組織全体の健康促進をめざす取り組みが進められています。
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桜美林大学リベラルアーツ学群 教授(学部長)種市 康太郎 先生
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