薬が効きやすい時間帯があった!?
薬が効いている時間には個人差がある
薬は体の中でどんな仕組みで効果を発揮するのでしょう。薬を飲むと体内での吸収が始まり、体液中の薬の濃度が上がっていきます。そして、一定の濃度に達すると薬が効き始めるのです。これを「有効濃度」と言います。吸収が終わると濃度の上昇が止まり、その後は薬が肝臓で分解されたり、腎臓で排出されたりすることで濃度が下がります。もちろん、効き目もなくなってしまいます。この薬が効いている時間、つまり有効濃度に達している長さは人によって違うため、効果には個人差があります。そこで、薬が有効に働くように、人によって薬の量と服用する頻度を変える必要があるのです。
朝と夜では薬の効き方が違う?
薬の基本的な働き方について、最近の研究でさらに細かなことがわかってきました。同じ人が同じ薬を朝飲んだ場合と夜飲んだ場合では、体内での薬の濃度の上がり方が異なるのです。つまり薬の濃度が高くなる時間帯では服用量は少なめでいいということになります。これは、24時間周期のリズムを作っている「時計遺伝子」の働きによるものです。消化管には、薬の吸収を行う“運び屋”がおり、時計遺伝子の働きによって、運び屋が活発に活動する時間帯が決められています。一方で消化管には吸収を妨げる“取り締まり屋”もおり、運び屋と同様に活発に活動する時間が決められているのです。運び屋が活発になると、有害物質を取り込むリスクも高まるので、それを抑制するため取り締まり屋も同じ時間帯に活発になると考えられています。
抗がん剤を有効に使う新たな技術
この活動時間に差があるという認識は、新たな発見をもたらしました。正常細胞とがん細胞は増殖する時間帯が違うこともわかってきたのです。そこで、がん細胞が増殖する時間帯に合わせて抗がん剤を飲めば、効果が高まることになります。さらに、数ある細胞の中からがん細胞を認識してそれに近づく機能を抗がん剤に付加することで、がん細胞だけに反応して効く薬が研究されており、副作用軽減の効果が期待されています。
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