建築材料の新たな可能性を「再発見」する
生活に密着した「建築仕上げ材」
建築材料は、大きく分けて「構造材」「仕上げ材」の2つがあります。建築材料学では主にそれぞれの機能や歴史などを学びますが、すでにある材料の特性の組み合わせや、新たな用途を考えることも研究の対象です。そして、これらの建築材料のうち、人々の生活で身近に接する機会が多いのが「建築仕上げ材」です。外部と内部の両方に使用される仕上げ材には、外壁や玄関のタイル、内壁の木材や漆喰などがあります。これらの印象や質感、色彩の評価、材料の経年変化、さらには古い建築材料の成分分析や地域特有の材料活用などが幅広く研究されています。
仕上げ材の変化から建築物の記憶をたどる
仕上げ材の研究の例として、木材の経年変化を調べるというものがあります。これには、さまざまな種類の木材に太陽光の数年分に相当する紫外線を照射し、表面の変化を観察するといった実験が行われます。木材の種類や含まれる成分によって変化は異なり、色が濃くなるもの、白く退色するものがあることがわかってきました。また、逆に素材の劣化状況から、建築物が造られた年代を推定するといった研究もあります。バングラデシュの伝統建築の調査では、外壁に用いられているレンガのサイズが小さく、形が安定しないものほど古い年代の建築物であることがわかってきました。建築時の資料が少なくても、レンガの製法などといった材料の視点を手がかりにして、調査が行われています。
地域資源としての材料を景観に生かす
さらに、既存の建築材料を用いて新たな組み合わせを考え、廃棄されていた素材を別の用途に役立てていく研究もあります。例えば、地域特産の陶磁器の破片などの廃材を活用することで、新たな地域デザインにつなげる可能性も考えられます。木材、石材、陶磁器といった古くから身近で使われてきた材料を見直し、使い方によって人々の暮らす空間をより快適にし、新たな価値を生み出すことが可能となります。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 芸術工学部 芸術工学科 環境設計コース 講師 土屋 潤 先生
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