ウコンの成分が「アルツハイマー病」の治療薬に?
インド人にアルツハイマー病が少ないのはなぜ?
超高齢社会を迎えた日本にとって、大きな課題の一つが「認知症」です。その6割が、アルツハイマー型と言われていますが、まだ根本的な治療薬はなく、世界的に新薬開発が待たれています。
その治療薬になるのではと注目されているのが、「カレー」に使われる香辛料のウコン成分「クルクミン」です。実は、カレーをよく食べるインドでは、アルツハイマー型認知症患者が少ないと言われています。
有機合成化学でクルクミンのような物質を作り出す
健康ドリンク剤などにも使われるクルクミンは、ウコン(ターメリック)の黄色色素です。ほとんど水に溶けないので、そのままでは薬剤研究には不向きです。そこで、有機合成化学によってクルクミンと同様の効能を持ちながら水に溶け、人に害のない物質を作る研究が進められています。クルクミンの化学構造を元に、レゴブロックのように有機分子を組み立てて、少しずつ構造を変えたものを作り、測定を重ねて効能はそのままで毒性のないものを見つけるのです。
薬と同時に認知症検査薬の開発も
薬と同時に、認知症検査薬の開発も進められています。アルツハイマーは、「アミロイドβ」というタンパク質が脳内に蓄積することが原因の一つだと言われていますが、この検査薬はアミロイドβに付くと光るようになっています。まだ動物実験前ですが、例えば採血した血液を使って、アミロイドβの量や濃度を測ることができれば、病気の進行具合がわかるようになるかもしれません。
ただ、このアミロイドβの何がアルツハイマー病を引き起こしているか、まだはっきりとわかっていないのです。現象があいまいで、アルツハイマー治療薬開発の大きな壁となっています。新薬開発には長い年月がかかりますが、製品化されれば難病治療の可能性が大きく広がることになるでしょう。
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山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 教授 今野 博行 先生
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