講義No.03471 数学 物理学

統計力学の世界~「マクロな世界」を「ミクロな世界」から解明する

統計力学の世界~「マクロな世界」を「ミクロな世界」から解明する

「統計力学」とは何か

人間が住んでいる世界は、1メートルや1秒などの単位でできている「マクロな世界」です。この世界を構成している物質をどんどん細かく見ていくと、分子→原子→原子核→素粒子などの「ミクロな世界」になります。「マクロな世界」は、「ミクロな世界」で行われていることの集積です。したがって、「マクロな世界」で起こっているさまざまな物理現象は、「ミクロな世界」から説明できるはずです。この「ミクロな世界」と「マクロな世界」の架け橋をするのが「統計力学」という学問なのです。

統計力学でマクロな世界を説明する

例えば、ある部屋の空気の状態を考えてみます。部屋の中には、酸素、窒素、二酸化炭素などの粒子が絶えず運動しています。一つ一つの分子がどんな運動をしているかをすべて解明すれば、部屋の中の空気の状態を理解したことになるかもしれません。しかし、「マクロな世界」における分子の数は膨大で、部屋の中のすべての分子を追うことは不可能と言ってもいいでしょう。計算そのものは、スーパーコンピュータをもってしても現実的には不可能ですし、すべて計算しつくしたとしても、それだけでは何もわからないのです。ここで登場するのが、「統計力学」です。確率的な考えを使うことによって、空気の状態の特徴である温度や圧力について決定的な予測をする手法です。

相転移やパズルを、統計力学を使って研究

統計力学では、「マクロな世界」の膨大な分子数を考えることがとても大切です。この膨大な数が引き起こす物理現象に「相転移」があります。「相転移」とは、水が1気圧で0℃のとき氷になるなど、同じ構成物質であるにもかかわらず、ある条件下で劇的な変化を起こすことです。この相転移は統計力学によって説明することができます。また、同じようなアイデアを使って、数独(ナンバープレイス)などのパズルの性質を知ることもできるのです。このように「統計力学」という学問は、自然現象やパズルなど幅広い研究にも応用できる魅力のある学問ジャンルなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 准教授 福島 孝治 先生

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 准教授 福島 孝治 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

統計力学

メッセージ

高校生のあなたには、いろいろなことを「面白がって」ほしいと思います。例えば、ゲームは面白いものですが、同じように数学の積分を解くことも面白いものです。自分が何に対して「面白い」と感じるのかに敏感になっていくと、自分にとってのテーマと言えるものに出会えるのではないか、と思うのです。もちろん、きらいな勉強や苦手な科目もあるでしょうし、それはそれとして勉強することは大切ですが、同時に物事を「面白がる」こと、「面白い」という感覚を大切にしてほしいと思います。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。