統計力学の世界~「マクロな世界」を「ミクロな世界」から解明する
「統計力学」とは何か
人間が住んでいる世界は、1メートルや1秒などの単位でできている「マクロな世界」です。この世界を構成している物質をどんどん細かく見ていくと、分子→原子→原子核→素粒子などの「ミクロな世界」になります。「マクロな世界」は、「ミクロな世界」で行われていることの集積です。したがって、「マクロな世界」で起こっているさまざまな物理現象は、「ミクロな世界」から説明できるはずです。この「ミクロな世界」と「マクロな世界」の架け橋をするのが「統計力学」という学問なのです。
統計力学でマクロな世界を説明する
例えば、ある部屋の空気の状態を考えてみます。部屋の中には、酸素、窒素、二酸化炭素などの粒子が絶えず運動しています。一つ一つの分子がどんな運動をしているかをすべて解明すれば、部屋の中の空気の状態を理解したことになるかもしれません。しかし、「マクロな世界」における分子の数は膨大で、部屋の中のすべての分子を追うことは不可能と言ってもいいでしょう。計算そのものは、スーパーコンピュータをもってしても現実的には不可能ですし、すべて計算しつくしたとしても、それだけでは何もわからないのです。ここで登場するのが、「統計力学」です。確率的な考えを使うことによって、空気の状態の特徴である温度や圧力について決定的な予測をする手法です。
相転移やパズルを、統計力学を使って研究
統計力学では、「マクロな世界」の膨大な分子数を考えることがとても大切です。この膨大な数が引き起こす物理現象に「相転移」があります。「相転移」とは、水が1気圧で0℃のとき氷になるなど、同じ構成物質であるにもかかわらず、ある条件下で劇的な変化を起こすことです。この相転移は統計力学によって説明することができます。また、同じようなアイデアを使って、数独(ナンバープレイス)などのパズルの性質を知ることもできるのです。このように「統計力学」という学問は、自然現象やパズルなど幅広い研究にも応用できる魅力のある学問ジャンルなのです。
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