小さいほど強くなる? 小さいものの力学
小さいほど相対的に強くなる「寸法効果」
アルミニウムなどの金属材料を変形させたときの力学応答は、その材料の大きさによって異なります。一般に、20μm程度以下(1μmは1000分の1mm)のスケールでは、材料のサイズが小さいほど相対的な強度が上がります。これを「寸法効果」と呼びます。実験の難しさなどから、小さいものの力学は完全には解明されていません。近年は電子機器が小型化し、スマートフォンのカメラや内視鏡などに代表される微小機械の需要が増えているため、小さいサイズにおける材料の特性を知ることが必要とされています。
数式を立てコンピュータでシミュレーション
小さいスケールにおける材料の変形などをコンピュータでシミュレーションするためには、変形する様子や現象を物理法則にのっとって数式化しなければなりません。数式を立てることができれば、それをコンピュータのプログラムに書き下して、小さいスケールでの力学をコンピュータで解くことができます。こうして作り上げた理論を、実験物理学の研究者による実験結果や文献と照合します。これまでの研究で、均等に変形(一様変形)している場合よりも、曲げるなど一様でない変形のほうが、材料の大きさの影響を大きく受けることがわかっています。
小さいものの力学についての理論確立を
金属材料の変形などをコンピュータでシミュレーションする目的は、実験や試作を減らし、製品開発の効率を上げることにあります。例えば自動車に関しては力学理論がほぼ確立しているので、開発時の衝突実験などはほとんどコンピュータでシミュレーションし、実際に自動車を作って確認するのは最終段階だけです。しかし小さなものの分野では、自動車などの大きなものの分野ほどは特性がわかっておらず、理論の確立が必要です。また最近では、過去に正しいと考えられた小さいものについての理論に反するような実験結果が出てきているので、もう一度基本に立ち返って、統一的な理論を組み直すことも求められています。
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山形大学 工学部 機械システム工学科 教授 黒田 充紀 先生
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