リニアモーターカーが変える鉄道の未来

リニアモーターカーが変える鉄道の未来

リニアモーターカーのさまざまなメリット

リニアモーターカーといえば、非接触浮上し超高速走行する乗り物を思い浮かべるでしょう。しかしリニアモーターの原理を利用した浮上式ではない鉄道はすでに広く実用化されています。
一般の鉄道がレールと車輪との摩擦を利用して回転から並進運動への変換を行うことで加減速を制御しているのに対し、リニアモーターは推進力・制動力を、車輪を介さず直接発生させます。そのため、急勾配を走れます。従来の鉄道における実用的勾配はせいぜい3.3%ほどに過ぎませんが、リニアモーターなら勾配が10%の坂も問題ありません。また、摩擦を利用せず滑ることがないので停車位置の精度を高められます。また、床下のモーターを小さくおさめて車体も小さくできるため、地下鉄の場合、トンネルの断面積を従来の約半分に抑えられます。

高速鉄道への応用も進展

これらの長所から、世界でリニアモーター導入が進んでいるのは主に地下鉄です。日本のリニアメトロの路線距離と実績は世界一です。
また、リニアモーターは、磁気浮上技術と組み合わせることで、非接触で超高速走行することが可能です。新幹線など従来の高速鉄道は時速350kmぐらいに実用的速さの上限があるといわれてきましたが、磁気浮上式リニアモーターカーなら時速550kmが可能で、東京~名古屋間を40分、東京~大阪間を67分で走ることができるのです。

リニアが日本の社会構造を変える!?

予算や地形の関係で地下鉄建設が困難だった都市でも、リニアメトロなら導入できる可能性が広がります。また、移動に数時間は必要だった地域へ、磁気浮上式高速鉄道で数十分で行けることになれば、ビジネスや観光にも大きな影響を与えることでしょう。リニアモーターの技術が、従来の鉄道の概念を大きく変え、生活や社会の枠組みを進化・発展させる可能性は、大きいと考えられます。

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先生情報 / 大学情報

東京大学 工学部 電気電子工学科 教授 古関 隆章 先生

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電気電子工学

メッセージ

「文明とはものを運ぶことである」とも言われるとおり、電動機で力を発生し人やものを動かすことは社会の役に立つのみならず、実際に自分でやってみるとわくわくする感じが味わえます。車両の駆動、発電による制動は、電気・機械のエネルギーを相互に変換することであり、その制御は、電気信号による情報や通信の世界と実世界の運動を結ぶ学問として大変興味深いと思います。自分の学問や技術が、実際に身の回りの生活によい影響を与え、役立つことをすぐに実感したい人は、この分野に進むとよいでしょう。

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