予防医療を可能にする「ウェアラブルデバイス」
少しの採血量ですばやく分析
血液採取は臨床検査の基本です。採取された血液は検査機関に送られ、分析に一定の時間が必要です。患者は検査結果を待たなければならず、再度の診断時間を設ける医師の負担にもなります。そこで、採血した場所ですぐに分析できる機器が開発されました。血液を小さなチップに入れ、専用の装置にセットすると数分で特定の成分を検出できます。この検査法では必要な血液量が大幅に減るので、患者の身体的な負担も軽減されます。
体に装着するデバイスで健康チェック
体に装着することで定期的な健康チェックができる「ウェアラブルデバイス」の開発も進んでいます。1日に数回の血液採取が必要な糖尿病患者向けには、小さな針のついたセンサーを腕に装着すると数分ごとの血糖値が2週間自動的に計測できる機器が販売されています。例えばこのセンサー自体に発電機能があれば、稼働期間をもっと伸ばし、さらに複雑な機能を持たせることもできます。そのため、酵素を利用した燃料電池や、心臓の拍動をエネルギーに換える電池など、体の中で動く電池の研究も進められています。将来は人体に埋め込む装置や、コンタクトレンズ型のデバイスなど、より多岐にわたる機器が実用化されるでしょう。
新たな医療機器が医学を支える
生体に直接触れる医療機器は、生体適合性のある材料で作られる必要があります。1980年頃までは既存の工業用材料の中から生体に問題のないものを選んで使用されてきましたが、現在は必要な機能を求めて、機器に適合する材料を一から作り出すようになっています。また、IoT機器の発達により、さまざまなデータを取得して医療分野に生かすことが期待されています。
少子高齢化が進む日本では、医療提供体制の見直しが進み、在宅医療の普及を推進しています。加えて、将来の医療費を抑制するためには、病気の発病を未然に防ぐ予防医療が必要です。新しい医療機器の開発は将来の医学の未来を支えることになるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 工学部 教授 高井 まどか 先生
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