デタラメに見える「確率論」の世界
偶然の現象にも法則がある
サイコロを振った時、「1」の目が出る確率は6分の1であることを私たちは知っています。しかし、実際には6万回振って、1の目がちょうど1万回出るわけではありません。同じことを無限回行えば、限りなく6分の1に近づいていく、つまり「6分の1と考えて問題ない」と考えることができます。これは「大数の法則」と呼ばれ、確率論の基本となる考え方です。
デタラメに見える、偶然に支配された現象にも、このように一定の法則があります。偶然現象を論理的に考えていく数学が「確率論」なのです。
電子は真っすぐ進んでいない?
確率論の中でも、1つの物の動きではなく、空気中の微粒子がどのように拡散するか、といったような多数の粒子の動きを考える分野があり、「無限粒子系」と呼ばれています。空気中の花粉やほこりなどの微粒子は「ブラウン運動」というランダムな動きをすることが知られています。そうした微粒子は、1つがランダムに動くだけでなく、相互作用が働くので、数が多いほど動きは複雑になります。
花粉のような微粒子以外にも、身の回りにはブラウン運動をするものがあります。それは「温度」と「電子」です。数学では、温度も「粒子」であると考えて、無限粒子系の理論を使います。例えば室内で温度がどのように拡散するかを、確率として計算できます。また、電子は、電気が流れる時に動く素粒子ですが、一直線に動くわけではなく、不規則に動きながら移動します。電気抵抗の公式は、ブラウン運動の計算によって説明することができます。
深層学習にも役立てられる理論
確率解析や無限粒子系の研究の成果は、さまざまな分野に応用されています。物理現象の解明だけでなく、「情報」を粒子としてとらえることもできます。確率解析は金融工学にも使われています。近年では、AIの深層学習(ディープラーニング)に、スピングラスという無限粒子系の数理モデルが使用されています。
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先生情報 / 大学情報
中部大学 理工学部 数理・物理サイエンス学科 教授 長田 博文 先生
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