トポロジーで探究するかたちとパターン
生命科学をかたちとパターンから解明
世の中には、さまざまなかたちとパターンがあります。数学には、連続している表面のつながりでかたちを捉え、その性質を探究する「トポロジー(位相幾何学)」という分野があります。ドーナツと取っ手つきのマグカップは「穴がひとつあいている」同じかたちと捉えます。
結び目は日常生活でも用いますが、数学では両端を閉じて、空間内の切れ目のない輪と考えます。そのような結び目のひとつに「三葉結び目」があります。三葉結び目は自身とその鏡像が同じかたちにはならず、右手型と左手型があります。DNAは結び目のかたちであることが知られています。遺伝子はコピーして増えますが、上下逆などにコピーすることがあります。すると性質が変わり変異が起きます。これらの現象も、かたちの変異と捉えて計算で予測できます。トポロジーは生命科学の解明にも役立てることができるのです。
トポロジーで新素材開発も
また、炭素原子からなる物質として、医療で用いられるカーボンナノチューブや量子コンピュータなどの素材として期待されているグラフェンなどがあります。これらのかたちの規則性や特性を対称性という観点から数学で調べることができます。物質のかたちを調べることで、より良い性質をもつ新しいかたちの物質を作り出すことも可能になります。トポロジーはロボットや次世代半導体、人工衛星、医療、環境などの素材の発明に貢献できるでしょう。
未来予測も可能に
かたちを把握するために、どれだけ表面が曲がっているかを表す曲率を考えます。「三角形の内角の和は180度」と習いますが、それは平面に書かれた三角形です。球面上に三角形を描くと、その和は180度よりも大きくなります。くびれた曲面では三角形の和は180度よりも小さくなります。
このように、多様な現象を数学で解き明かす分野を数理科学といいます。自然界にあるさまざまなかたちについて、なぜそのようなかたちなのかという原理原則を探究することで、未来予測も可能になりつつあります。
参考資料
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