ダーウィンに学ぶ!? 遺伝子組換えと進化工学的手法
酵素の触媒作用とは?
酵素は、触媒として作用するタンパク質です。酵素は、人間をはじめとした生物の生命活動において極めて重要な働きをしています。酵素はいろいろな場面で応用されていて、中でも食品加工や食品生産は代表的な応用分野です。例えばパンやビール、清酒などは、微生物や微生物の酵素が原料(穀類)に作用することを利用して製造しています。かつては、酵素は動植物の組織や、比較的多くの酵素を生産する限られた微生物から得られていました。しかし、採れる酵素の量、種類は限られていました。
遺伝子組換えで酵素が進化する
産業用の酵素は、遺伝子組換えの技術を使って、培養が容易で扱いやすい大腸菌や酵母などの微生物につくらせることができるようになっています。微生物といっても感染症を起こすようなものではなく、極めて安全な種類のものを使って遺伝子組換えは行われます。
さらにより高度な産業利用のために、酵素やタンパク質の機能改良が行われます。最近ではこの機能改良に「進化工学的手法」がよく使われるようになってきました。
進化工学的手法で時間を飛び越える
進化工学的手法とは、希望する性質や機能を持った分子をつくり出すのに使われる手法です。例えば、長時間使っても安定な酵素、有機溶媒中でも働く酵素など、いろいろな改良型酵素がつくり出されています。この手法では、元になる酵素の遺伝子に突然変異をランダムに導入し、その中から最も優れた性質を“獲得”した酵素(とその遺伝子)を選び取る、という操作を繰り返します。この技術は、自然界で起こっているダーウィンの進化を研究室内で模倣するものであり、人類が何千年も前からやってきた作物や家畜の育種(品種改良)と同じです。変わりダネ(変異体)をたくさんつくって、その中から最も優れたものを選んでかけあわせるということを、生物個体のレベルでやるか、分子のレベルでやるかの違いです。
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静岡県立大学 食品栄養科学部 食品生命科学科 准教授 河原崎 泰昌 先生
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