コミュニケーション障がいの人々を支える、言語聴覚士の役割
失語症はコミュニケーション全般の障がい
脳梗塞や事故などのさまざまな原因で左脳の「言語野」という部位に損傷が及ぶと、相手と対話するコミュニケーション機能の障がい、「失語症」が起きることがあります。失語症は単に話せなくなる症状と思われがちですが、そうではありません。自分の意図を言葉で表現できず、相手の言葉が聞こえてもその意味を理解できないのです。言葉の「意味」そのものが失われてしまうため、文字も認識できなくなります。つまり、「話す」「聞く」「読む」といったコミュニケーションにかかわる行為が一切できなくなるのです。
言語、聴覚などのリハビリを行う言語聴覚士
失語症は、言語や記憶、モノや空間の認知、思考、目的を持った行為などの複雑な「高次脳機能障がい」の一種で、頭の中で言語を操る能力が失われた状態です。失語症の人は言葉のわからない外国にたった一人でいるような状況で、そのつらさは大変なものです。そこで「言語聴覚士(ST)」がその人らしく生きる生活を取り戻すサポートを行います。そのほか、言語聴覚士は、嚥下(飲食物の飲み込み)の分野の患者さんにリハビリを行う国家資格を持つセラピストです。
保たれている患者さんの能力を生かしてサポート
失語症のリハビリテーションでは、患者さんの障がいとなっている機能の改善と、保たれている機能を有効に使ったコミュニケーションを、バランスよく組み合わせて訓練します。具体的には、刺激法といって物品の絵を描いたカードを使い、モノの名前を復唱して形と意味をつなげていく方法などをとります。これらの訓練は言語聴覚士と患者さんが一対一で行いますが、失語症のリハビリで大事なのは、言語聴覚士と医療スタッフ、家族、介護者が連携してコミュニケーションの改善に取り組むことです。言語聴覚士には患者さんの「今できること」を最大限に生かしながら、患者心理にも配慮しつつ、さまざまな場所でさまざまな人との意思疎通をサポートする視点が重要なのです。
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大阪人間科学大学 保健医療学部 言語聴覚学科 教授 川井 久和 先生
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