万葉集からSNSまで~日本語のすべてを探究する日本語学~

万葉集からSNSまで~日本語のすべてを探究する日本語学~

日本語に関するあらゆることが研究対象

「日本語学」とは、日本語に関して、意味、文法、発音、文字などさまざまな要素を、時代ごとの変化や地域差(方言)、外国語の影響といった多角的な観点で調べ、背後にある仕組みを見いだしていく学問です。『万葉集』など古代の文献から現代のインターネット上の文章まで、あらゆる日本語が研究対象です。普段当たり前に使っている日本語も、客観的に見ると疑問点や面白い現象が浮かび上がってきます。

生き物のように変化する日本語

例えば、「一枚しかない」というときの「しか」という助詞は、古代にはありませんでした。「~よりほかになし」という言い回しでこの意味を表していたのです。また、「顔も洗ったし、歯も磨いた」など、事例を並べるときの接続助詞「し」が、最近では「ここにあるし」のように、単に文末につけて「~よ」「~ね」と同じような終助詞として使われるようになってきています。また、「ら抜き言葉」も増えてきています。
こうした言葉の使い方の変化が、どのように発生したかを調べるのも日本語学の領分です。言葉は生き物のように変わっていきますから、日本語学の研究テーマは無限にあります。

日本語学の影響力と魅力

ITが発達する前は、一つひとつ文献にあたるという大変な作業で、集める用例には限界がありました。現在は文献もデジタルデータ化され、検索をかければ瞬時に膨大な用例を集めることができます。歴史的資料をこの手法で研究し直したときに、日本語の新たな発見、新しい解釈が生まれる可能性もあり、古典文学の研究や歴史学への影響も大きいと言えます。
グローバル化によって他言語への関心が高まっており、他言語との比較対象として日本語学を学ぶ人も非常に多くいます。日本語は1億人以上の話者がいて、メディアが発達した社会で使用され、漢字、ひらがな、カタカナと独自の文字体系があり、方言差のバリエーションも多い、という豊かな言語です。日本語学は興味の尽きない学問なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名古屋大学 文学部 人文学科 教授 宮地 朝子 先生

名古屋大学 文学部 人文学科 教授 宮地 朝子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

日本語学、言語学、日本文学

メッセージ

世界には何千もの言語がありますが、現代語としても歴史的な資料としても、日本語ほど多角的に観察できる言語は多くはありません。また、日本で生活していれば、日本語のデータの海の中にいるようなもので、日常会話やインターネットの中で、「あれ?」と思う日本語の不思議な現象を見つけて、パズルを解き始められます。日本語学はそういう楽しい学問です。
また、日本語を研究することは、社会に出てからも、外国語を学ぶときにも、場面に応じて適切な言葉をチョイスするセンスを磨くことにつながります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。