「心理学」は自分の心を見ることから始める科学的な学問だ
心理学を学べば人の気持ちがわかる?
「心理テストで性格診断」「人を操る心理学」といった“心理”に関する本や動画を楽しむ人はたくさんいるでしょう。確かに楽しいものも多いですが根拠のないものも多く、「結果を信じて行動したら、かえってこじれた」というような問題が起こりかねません。本来、心理学は科学です。科学的な手法でデータを集め、理論を立てて、人の心や行動を体系的に理解していく地道な積み重ねなのです。ですので、心理学を学べば人の気持ちがわかるようになるというより、人の気持ちがわかるといえる根拠は何なのかを探ることが重要なのです。
心理学の土台を支える基礎心理学
どんな学問でもそうですが、心理学でも基礎と応用があります。基礎心理学は、心と脳はどう関係しているのか、人が刺激をどう処理するのかなど、人間の心や行動の法則を探る学問です。応用心理学は、学校や職場のメンタルヘルスや、売れる広告を作るなど、実生活の課題に役立てます。確かな根拠を持ちつつ心理学を社会で生かすためには、基礎と応用の両方が必要です。
古代ギリシャ人とも共通する記憶術
基礎心理学を日常に生かす一例として、「記憶」を取り上げてみましょう。記憶を含め頭の中のはたらきは「認知心理学」というジャンルで扱われます。例えば、勉強した成果が試験で発揮できなかった原因が勉強方法やキーワードの覚え方だとしたらどうすれば克服できるようになるでしょうか。「認知心理学」ではその方法を考えるだけでなく、記憶のメカニズムそのものについてさまざまな推論を立て、それを裏付ける調査をして確かめていくのです。
記憶術自体は2500年前からあるとされています。数字を語呂合わせしたり、場所に関連づけたりと、古代ギリシャ人も苦労していたようです。このように覚えるための方法は昔から創意工夫されてきましたが、なぜそれらが記憶の定着につながるのか、そうした記憶のメカニズムについてはまだまだ研究途上です。そんな人間の本質にかかわる謎を解き明かす学問が心理学なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪人間科学大学 心理学部 心理学科 准教授 平野 哲司 先生
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