動物を診断・治療しない獣医師の仕事とは

動物を診断・治療しない獣医師の仕事とは

獣医師の仕事は「動物のお医者さん」だけではない

獣医師の資格取得者がする仕事というと、多くの人が「動物のお医者さん」を想像すると思います。しかし、ほかにもたくさんの仕事があります。まず、動物を「食品」として見た場合、次のような仕事があります。生産者サイドでは、牛や豚やニワトリといった家畜の生産性を向上させる仕事です。例えば、家畜の病気予防のための健康管理や、効率よく家畜が増えるような受精卵の管理を行っています。そして、家畜が育つと、全国にある食肉検査所に出荷されます。ここでは、家畜の健康検査や臓器などの病理検査が行われています。これも獣医師の仕事です。

食品の衛生管理に獣医師が関与

検査が終わると続いて食品加工が行われます。食品加工場に対する定期的な衛生チェックや新規の工場の認可を行政サイドとして行っているのも獣医師です。さらに、食肉を販売する店舗には「立入検査」を通して、設備や衛生面の検査を行っています。調理を行う飲食店や学校給食に対しても同じような検査が行われます。販売で食中毒などの問題が生じると、都道府県の行政機関の一員として獣医師が原因を究明して、施設に原因があれば営業停止の判断を行います。このように、食品の衛生管理のほとんどに獣医師が関わっているのです。

開業独立、公務員、企業、その働き方も多彩

食品以外の分野では、野生動物やノラ猫・ノラ犬の保護・管理も行政機関に所属している獣医師の仕事です。人の健康を守るために、動物に対するワクチン注射も行います。空港や港にある検疫所では、輸入食品や輸出入される動物の伝染病検査などを行っています。また、企業に属する獣医師もいます。製薬会社などでは、薬の安全性や効果を知るために動物実験を行いますが、その施設や動物の管理、実験の評価は獣医師の仕事です。獣医師は仕事の内容面だけでなく働く形態も、動物病院を開業して独立したり、公務員、企業に所属したりするなど多彩なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

山口大学 共同獣医学部 獣医学科 教授 佐藤 宏 先生

山口大学 共同獣医学部 獣医学科 教授 佐藤 宏 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

獣医学

メッセージ

私は寄生虫について研究しています。かつて日本には多くの寄生虫がいましたが、今日の日本にも寄生虫はいるのでしょうか。実はたくさんの寄生虫が、私たちの身のまわりにいます。生活環境、例えば、食品や水に寄生虫は潜んでいるのです。そんな寄生虫を見つけ、それが私たちの健康や動物の健康を脅かさないように、研究を進めています。顕微鏡で見ると、寄生虫は実に不思議な形をしています。また、面白い特性もあります。寄生虫の秘密を知ると、生物学の真髄に触れることもできるのです。

山口大学に関心を持ったあなたは

山口大学は「発見し・はぐくみ・かたちにする 知の広場」を理念に、9学部からなる総合大学です。英語の苦手な人も得意になれる! 山口大学のTOEICを活用した英語教育はすっかり定着しました。また、学生だからこそ考えつくアイデアに、資金を提供するプログラムとして「おもしろプロジェクト」があります。これら山口大学の個性的な取り組みにぜひご注目ください。