いざという時に身を守る、心理学を応用した防災教育とは?

いざという時に身を守る、心理学を応用した防災教育とは?

いざという時に行動しない

私たちは、正しく世の中を見ているつもりでも、実際にはいろいろとゆがんだ見方をしています。これを「バイアス」と言います。バイアスは、災害が起きた時など、いざという時の避難行動にも負の影響を与えることがあります。例えば、非常ベルが鳴っても「どうせ何もないだろう」と自分で勝手に正常な方向にゆがめて解釈してしまうことはありませんか。これは「正常性バイアス」が働いていると言えます。また、誰も逃げないから大丈夫だろうと考えてしまう「集合的無知」も、避難行動の遅れに影響しています。

人の認知の特徴を踏まえた防災教育

地震や土砂災害などの自然災害が増えている昨今、私たちは命を守るために備えなければなりません。防災が大切だということはわかっていても、実際はなかなか備えができない、いざという時に避難行動できない人は多くいます。そのことで命を落とす人々を減らすためには、人間の認知の特徴を踏まえた防災教育が必要です。ただし、危険ばかりを伝えて怖がらせるだけではかえって行動できなくなる場合もあります。自分でできるという対処可能性の認識をいかに高めながら防災力を高めていけるかが大切です。

対処可能性の認識を高め、行動変容を促す

例えば、小学生向けの防災教育では、地震が起きた直後だけでなく、家に帰るまでの行動の流れを具体的にイメージできるようにすることがポイントです。登下校の時に地震が起きる可能性もあるので、小学生でも自分で考えて身を守る行動が取れなければなりません。動画教材で考える、家に帰ってから保護者の方と話し合ってもらうことで理解度が高まり、対処可能性の認識も高くなります。また、人間の思考や行動を前向きに捉える「ポジティブ心理学」の知見を活かした「防災強みカルタ」は、自分の強みを防災に活かす方法を学ぶことで、行動変容を促しています。このように、心理学の理論を防災教育に活用することで、いざという時に自分の身を守ることにつなげられるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪教育大学 教育学部 教育協働学科 健康安全科学部門 教授 豊沢 純子 先生

大阪教育大学 教育学部 教育協働学科 健康安全科学部門 教授 豊沢 純子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会心理学、教育心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたがふと疑問に思ったことを探究できるのが、大学の良いところです。でも、受け身の姿勢だと学びが身に付かないので、積極的な姿勢で取り組むことが大切です。そのためには、自分が本当に学びたいと思うテーマや将来なりたいものを見つけて、主体的に学んでほしいと思います。それが安全に関することなら、ともに研究しましょう。危険に備えること、適切に対処することは実はとても難しいことです。その困難さには、人間の認知の特徴が深く関係します。

大阪教育大学に関心を持ったあなたは

本学は、我が国の先導的な教員養成大学として、教育の充実と文化の発展に貢献し、とりわけ教育界における有為な人材の育成をとおして、地域と世界の人々の福祉に寄与する大学であることを使命としています。この使命を達成するため、実践的な教職能力を養う優れた教員養成教育を推進し、豊かな教職能力を持って教育現場を担える学校教員を育成するとともに、学術と芸術の多様な専門分野で総合性の高い教育を推進し、高い専門的素養と幅広い教養をもって様々な職業分野を担える人材の育成をめざしています。