効果的な高齢者体操のために必要な動作解析

効果的な高齢者体操のために必要な動作解析

高齢者には運動が大事、でも……

認知症予防や体力づくりを目的に、高齢者の体操への取り組みが広がっています。みんなで集まって体操をするのは、ひとりになりがちな高齢者にとって楽しみでもあり、とても大事な習慣だと言えるでしょう。
いろいろな専門家によって体操が考案されています。しかし、踊りの振り付けの延長のようなものではじゅうぶんな効果が得られるかどうかがわかりません。

バランスよい効果的な体操を

高齢者の体操では、無理なくできてバランスや筋力など総合的な能力が上がることが求められます。狙った筋肉の能力を向上させるにはどういった体操をどのような強さで行うのが効果的か、ということがわかった上で体操のプログラムを組むことが必要です。
さらに運動中の血圧や心拍数、そして心臓への負担も考慮しなくてはいけません。肺や心臓に負担がかからず、安全に高齢者が運動できるようにするためです。
そこで、科学的データを取りながら体操を考案する研究が進んでいます。

コンピュータで動作を解析

この研究では、協力者である高齢者の体にマーカーを貼り、踏むとその力が測定できるプレートの上で動いてもらい、その数値をコンピュータに取り込んでいきます。
関節が動く速度や角度は、撮影した画像から計算できますので、それに力の強さを入れてさらに計算していくと、どのような力が働いたら、ある関節がどんなスピードで動くかということがわかります。
それだけでは全体の力しかわからないので、その結果を人体の筋肉にモデル化して解析します。すると、「どの筋肉がどれぐらい動いてこういう動作になる」ということが明らかになります。これらの結果から膝などの関節の靱帯や軟骨にかかる負荷量も計算されます。あわせて、運動中の酸素摂取量や血圧、心拍数も測定しておきます。
このように、理学療法学では科学的データを取りながら効果的な体操を開発することも重要な仕事です。この研究が進めば、体の痛みを訴えたり、けがが原因で寝たきりになったりする高齢者は、今よりもずっと減ることでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 健康福祉学部 理学療法学科 教授 山田 拓実 先生

東京都立大学 健康福祉学部 理学療法学科 教授 山田 拓実 先生

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理学療法学

メッセージ

医療や保健福祉、介護サービス制度は大きく変革しています。理学療法士の働く場所も拡大しています。首都大学東京のカリキュラムは理学療法を全般的に学べるものになっています。理学療法士をめざすなら、たとえ高校生の時、スポーツ・整形など特定の分野に興味を抱いている場合でも、中枢神経や高齢者、呼吸循環、地域などいろいろな分野の勉強にチャレンジする姿勢が大事です。英語も学会発表や論文を書く際に英文論文を読む機会も多く、自然に実力がついていきます。海外の大学院に留学している人もいます。

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