人材マネジメントにおける「ソーシャルキャピタル」の重要性とは?
「ソーシャルキャピタル」とは何か
「ソーシャルキャピタル」は、ほかの学術用語と区別するために「社会関係資本」と訳されます。もともとは、社会学や政治学、開発経済学などの分野で使われていた概念で、「人と人との信頼関係や結びつきから得られる資源」を指します。
1990年代半ばにニューヨーク市長だったジュリアーノ氏は、当時、治安が悪かったニューヨークの地下鉄の落書きを消すことで治安を回復させました。もちろん落書きだけを取り締まっただけでなく、未成年者の喫煙、万引き、花火や爆竹など軽微な事案を見逃さずに対処し、周辺の環境を落ち着かせたことで、人々に安心感と信頼感を醸成して、治安の回復につなげることができたのです。ソーシャルキャピタルを利用した好例と言えるでしょう。
人材マネジメントとソーシャルキャピタル
このソーシャルキャピタルの考え方を経営学、特に人材マネジメントに応用する研究が行われています。人材マネジメントとは、企業が目標を達成するために、従業員のスキルやモチベーション、組織の力を高めることを研究する学問です。
従業員のスキルやモチベーションを高めるためには、個々人の能力を上げるだけではなく、職場の中の信頼関係の構築、すなわちソーシャルキャピタルの視点が必要かつ有効であることがわかってきたのです。
証拠に基づいた人事施策の実行へ
例えば、仕事で行き詰まったときに、相談できる人が社内にいる人、いない人、あるいは相談できる人が複数人いる人と、1人しかいない人では、仕事の進め方や成長の度合いに差が出てくる可能性があります。また、ずっと同じ部署にいる人と、さまざまな部署に異動した人では、身につくスキルや人間関係の多様さに違いが出てきます。
こうした働いている人にとっては肌感覚でわかっていても、理論的にはわからない事例や実態を把握し、分析して、「社内で信頼できる人を作り上げる仕組みを構築すること」「異動の有無・時期・タイミングを最適化すること」も、人材マネジメントの重要な研究テーマなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 西村 孝史 先生
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