人の命を救う、4つの輪の「救命の連鎖」とは?

人の命を救う、4つの輪の「救命の連鎖」とは?

心停止した人の生存率を上げるには

人間は、それまで健康に生活していた人でも、ある日突然、発作を起こして倒れてしまう可能性があります。原因は心臓発作だったり、呼吸停止に陥ったり、脳や臓器に問題がある場合だったりと、人や状況によってさまざまです。傷病者が心肺停止に陥ったとき、「バイスタンダー」、つまり現場に居合わせた人が救命処置を行う場合、行わなかった場合と比べて救命率が1.2倍になることがわかっています。傷病者の救命率を上げ、社会復帰につなげるためには、バイスタンダーの役割が非常に大切になります。

鍵を握る4つの輪の連鎖

傷病者を救命し、できるだけ健全な状態で社会復帰させるには、「救命の連鎖」と呼ぶべき4つの輪の連続的なつながりが重要な鍵となります。1つ目の輪は、心停止の予防です。食事中の窒息、熱中症、溺水などの外因性の心停止は予防することが可能です。頭が痛い、胸が痛いなどの初期症状を見逃さず、容態が悪化する前に医療機関で治療を開始することが重要です。2つ目の輪は、心停止の早期認識と119番への通報です。体を揺すったりたたいたりしても反応がなく、意識がないようなら、すぐに119番に連絡します。3つ目の輪は、一次救命処置です。胸と腹部の動きを見て普段通りの呼吸がない場合は、心停止と判断して直ちに胸を強くリズミカルに押す胸骨圧迫を開始します。近くにAED(自動体外式除細動器)があればそれを使って心肺蘇生を試みます。最後の4つ目の輪は、二次救命処置です。救急車で到着した救急救命士や病院の医師など、専門家による処置が開始されます。

正しい知識の幅広い普及が大切

このように「救命の連鎖」における4つの輪のうち3つまでの成否が、バイスタンダーの判断力と行動力に委ねられています。実際、心停止の傷病者のうち、半数以上がバイスタンダーに対処してもらっていたという統計もあります。救命のための適切な指導を一般の人々に行って、正しい知識の普及を図っていくことも、専門家である救急救命士の果たすべき重要な役割なのです。

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帝京大学 医療技術学部 スポーツ医療学科 救急救命士コース 助教 菊川 忠臣 先生

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救急救護学

メッセージ

帝京大学では、国家資格である救急救命士になるために必要な知識や技術を教えています。救急救命士は病院前救護、すなわち私たちの日々の生活の中で、急な病気やケガで苦しんでいる人のもとに駆けつけ、適切な処置を施して医療機関に運ぶ役割を担うスペシャリストです。
この資格を最大限に生かせるのは、救急車が配置されている各市町村の消防本部です。本学では消防官をめざすための公務員試験対策も充実しています。
人の命を救うという熱い想いを持つあなた、ぜひその想いを抱いて、学びに来てください。

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。医学部・薬学部・医療技術学部を擁する板橋キャンパスの最大の特長は、医学部附属病院が隣接している点。学生は救命救急センターやERなど最先端の医療を、実習を通し体感できる場ともなっています。都心へのアクセスも良好であり、キャンパス最寄りの十条駅から池袋駅へ7分程度で行けますので、ショッピングなども気軽に楽しめます。