寝たきりや認知症の予防に効果があり、生活の質も上げる高齢者体操
サルコペニアとは
人間の筋力は、加齢によって落ちていきます。筋力だけでなく、筋持久力や筋肉量も落ちていきます。この現象を「サルコペニア」と言います。60歳ぐらいになると、20~30代のころの6割ぐらいに落ちてしまいます。
筋肉には速く動いて瞬発力を出す白筋(速筋)と、動きは遅く持久力のある赤筋(遅筋)がありますが、加齢にともなう萎縮や筋力低下が見られるのは白筋の方です。この現象は、何もしていないと誰にでも自然に起こってきます。
高齢者のための体操
しかし、運動をすると筋力は上がってきます。しかも、いくつになったら遅いということはなく、90歳を過ぎてからでも運動効果は認められています。さらに、普段から運動を習慣にしていると、認知症予防に効果があるということがわかってきました。これらから高齢者が体操をすることはとても重要だということがわかります。
現在、いろいろな高齢者向け体操が考案されています。例えば東京都の荒川区では、理学療法学の見地から考案された「荒川ころばん体操」という体操に、1500名ほどの高齢者が取り組んでいます。この取り組みによって、後期高齢者の転倒によるけがが半分ほどに減るなど、明らかな効果があることがわかりました。
体操の効果を知る
さらに、参加者の健康関連QOL(健康に関してどれぐらい満足度が高いか)の調査でも興味深い結果が得られました。この調査は体の痛みや活力の有無、社会的な役割を果たせているかどうか、健康度の自己評価などの調査ですが、体操をしていない高齢者だと、65歳ぐらいから徐々に下がり始めるのが普通です。しかし、体操の参加者は下がるどころかむしろ上がっています。体操のほかに、体操が終わってからの食事やおしゃべりといった交流の時間ができることも、孤独になりがちな高齢者には重要であることもわかっています。
理学療法学はこのように、高齢者の生活の質(QOL)を向上させることにも役立っています。
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