X線位相コントラスト法を使えば、より鮮明な画像が撮影できる!
レントゲン博士が発見したX線
1895年、物理学者のレントゲンによりX線が発見されました。私たちが健康診断などで受けるX線検査もレントゲンが発見した仕組みに基づいて行われています。簡単に説明すると、タングステンという硬い金属に熱電子を衝突させることで、X線が発生します(X線管装置の動作原理)。X線が体を透過しフィルムに当たると黒いX線画像が得られますが、骨ではX線が多く吸収されるので白いX線画像になります。発見後100年以上たった現在も、技術は進化しています。フィルムの利用は減り、デジタル化が進んでいます。操作ボタンを押せばすぐに撮影した画像がモニターに表示されるフラットパネルディテクターが普及しています。
X線位相コントラスト法の活用でさらに鮮明に
現状よりもさらに鮮明に画像を撮影したいという思いから、画質改善のための研究が続けられています。そのひとつが、「X線位相コントラスト」を使った新しい撮影方法です。これまでのX線撮影では、物質がX線を吸収または透過する性質を使って像を得てきましたが、新しい撮影法では、X線が物質に当たると向きを変える、屈折する性質を利用します。この方法では、骨や臓器などの表面や内部構造を強調した画像をつくることができます。一般的なX線撮影では写らなかった軟骨やじん帯も描写できます。
課題は特殊なX線発生装置を用いること
X線位相コントラストを使った撮影方法の研究がさらに進めば、血液循環の様子や細胞レベルの情報を得ることも可能になります。最新の実験では、肝臓の微細構造の鮮明描写に成功しています(この研究は、科学研究費の支援を受けて実施されています)。しかし、この撮影法の難しいところは、シンクロトロン放射光装置という高度なX線機器を利用することです。しかし、その問題もいずれは解決し、一般的なX線管装置でも実施できるようになるでしょう。MRI(磁気共鳴画像診断装置)よりも鮮明な画像が得られる可能性があり、医療界から期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 放射線学科 准教授 関根 紀夫 先生
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