人と人のつながりでめざす、健康格差のない社会

人と人のつながりでめざす、健康格差のない社会

保健師との会話で高血圧が改善

高血圧は、脳卒中や認知症など、介護が必要となる病気の大きな原因の1つです。高血圧になる要因の1つに「お酒の飲みすぎ」がありますが、人が習慣を変えるのは難しいものです。飲酒量が多く血圧が高い人たちをランダムに2つのグループに分けて、一方のグループには医師による通常診療だけを、もう一方のグループには医師の診療に加えて保健師が保健指導を行い、コミュニケーションで本人の気づきと節酒に向けた行動変容を支援するという実験が行われました。すると、通常診療だけのグループは高い血圧のままでしたが、保健師が支援も行ったグループでは、血圧が目標値まで下がるという成果が得られました。

地域の健康を守るソーシャル・キャピタル

超高齢社会において、「自立して生きる期間(健康寿命)」をどう延ばすか、地域による健康格差をどう縮めるかが課題となっています。市町村などが中心となって地域の健康づくりや要介護を予防する仕組みづくりが進められていますが、そこで重要なのが、人と人とのつながりや、信頼関係、お互い様という気持ちなどを柱としたソーシャル・キャピタル(社会関係資本)です。このソーシャル・キャピタル度が高い地域では健康が守られることが科学的に証明されています。高齢者が要介護になる過程においては、病気や加齢だけでなく、精神的・社会的な要因も大きく影響するからです。

その人の価値観や背景に寄り添う支援を

自治体と協力して行われた高齢者の追跡調査では、仕事や社会参加をしているか、などの社会的要素と、「3年後の要介護状態」との関連が見えてきました。退職を機に家計の支出を抑えようと外出を避けて足腰が衰えたり、人との関わりが減って気持ちが落ち込んだりする例もあります。身体の健康状態だけでなく、一人一人の価値観や背景も大切にして、個々に適した支援を行うことが重要であるといえます。そして地域のソーシャル・キャピタルを醸成し、どんな人も取り残さない、予防の仕組みをつくることが求められています。

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大阪大学 医学部 保健学科 看護学専攻 教授 樺山 舞 先生

大阪大学 医学部 保健学科 看護学専攻 教授 樺山 舞 先生

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保健学、地域看護学、地域包括ケア

先生が目指すSDGs

メッセージ

好奇心は物事を成し遂げる力になります。楽しいと感じること、心に引っかかることを大切にしてください。本学には多くの学部があり、さまざまな分野の専門家がいます。またグローバルな研究活動に向けた留学の支援もしています。価値観やバックグラウンドの違う人との出会いは、研究をする上でも仕事をする上でも役立つでしょう。勇気を出して挑戦すると、世界が大きく広がります。何かに一生懸命に取り組んでいる時は視野が狭くなりがちですが、プロフェッショナルとして最後に必要なのは広い視野だと感じています。

先生への質問

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。