環境にやさしいプラスチックが地球を救う

環境にやさしいプラスチックが地球を救う

土に還るプラスチック

環境に優しいプラスチックとして注目されている「バイオプラスチック」には大きく分けて「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の2種類があります。生分解性プラスチックは、1970年代にゴミ問題の解決策として考え出されました。プラスチックでありながらも、土中の微生物によって分解されるため、最終的にゴミが土に還るプラスチックとして注目されています。

燃料としても使われる生分解性プラスチック

生分解性プラスチックは、主にヨーロッパで活用されています。ヨーロッパでは、ゴミを分別収集しエネルギーに変えて再利用する動きが進んでおり、生分解性プラスチックは重要な燃料源にもなっています。つまり、ゴミが微生物により分解されるときに発生する「バイオガス」からメタンを取り出し、燃料として利用しているのです。
またその一方で、石油以外の原料から作るバイオマスプラスチックの研究も進んでいます。例えばトウモロコシなどに含まれるデンプンを原料に作るバイオマスプラスチックがあります。デンプンは光合成で取り込んだCO₂から作られるので、使用後に燃やしても大気中のCO₂が増えません。つまり地球環境に負荷をかけないプラスチックなのです。

性能アップと低コスト化がカギ

代表的なバイオマスプラスチックとして、デンプンから合成される「ポリ乳酸」という樹脂があります。いま研究の課題となっているのは、ポリ乳酸の柔軟性や耐熱性などの性能を高めることです。また石油由来のプラスチックは用途に応じてポリエチレン、ポリ塩化ビニルなど100種類を超える樹脂が作られており、さまざまな製品になっています。ところがバイオマスプラスチックで工業化が進められているのは、主にポリ乳酸しかありません。
ポリ乳酸の活用法の一つとして、「植物ポリオール」と呼ばれるウレタン原料が開発されています。ほかにも扱いやすさと低コストの両立をテーマに、バイオマスプラスチックの実用化に向けた研究が進んでいます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 工学部 応用自然科学科 応用化学科目 教授 宇山 浩 先生

大阪大学 工学部 応用自然科学科 応用化学科目 教授 宇山 浩 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

高分子化学、環境工学、応用化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、バイオ系のポリマー(重合によって生じた化合物)に関する研究をしています。バイオ系のポリマーは、石油を使わない新しいプラスチックや生分解性プラスチック(微生物により分解されるプラスチック)など、環境にやさしい樹脂を作るのに適しています。未来の地球環境を守るために、このような材料の開発研究が進んでいるのです。またバイオ系の素材は、化粧品や食品の原材料としても注目されています。あなたもこのような研究に興味があるなら、大学はぜひ化学の知識を生かした分野に進んでほしいと思います。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。