友だちがいないように見られたくない?
つながらないと不安?
携帯電話の普及によって24時間、誰かとつながることのできる環境がつくり出されました。それによって、電波の届く範囲にいるのに友だちからメールが来ないと、さびしさや孤独感、不安を感じる人がいます。携帯電話がない時代は、電車で移動するときなどは友だちと連絡を取り合うことが物理的に不可能でしたから、これは現代社会の特徴的な心理と言えます。
気になるのは同世代の視線
大学生を対象にした調査で、電波のつながらないところにいると不安になる傾向が高い学生ほど、携帯メールのやり取りが多く、また、友だちからメールが届いたらすぐに返信する「即レス」をしないと相手に申し訳ないと感じる人が多いことがわかりました。
これは24時間いつでも友だちとつながれるようになったことで、若者の間で「友だち」の存在がより大きくなってきたことを意味します。そして自分一人で部屋にいることは平気なのに、外にいると周りの人の目を気にし、特に同年代の人たちがいる学校などでは、一人でいると「友だちがいないように見られるのではないか」と、不安を感じるようになると言います。
一人で食事する姿を見られたくないから「便所飯」
例えば、学食で一人だけで食事をとりたくないという学生は少なくありません。このような感覚がどんどん過敏になっていくと、やがて、「一人で食事をとるくらいならトイレの個室で食べたほうがまし」と考えて、「便所飯」と呼ばれる行動につながる人もいるようです。昼食時、食事をする友だちが周囲に見当たらなければ、メールや電話で熱心に探して誰かと一緒に食べる、それが無理なら食事を抜くという人もいます。実際に、「便所飯」を経験したことのある学生はきわめて少ないと考えられますが、現代の若者の一つの側面をとらえた現象だと言えるでしょう。これは必ずしも一人で行動できないというのではなく、一人で食事をしている姿を見られたくない、友だちがいないように見られたくない、ということなのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 人間科学部 社会学科目 コミュニケーション社会学分野 教授 辻 大介 先生
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