あなたの知らない音楽の世界

あなたの知らない音楽の世界

日本の○○にソックリな音楽!?

あなたが好きな音楽は、J-POPでしょうか、それともロックやR&B、HIP HOPでしょうか? いずれにせよ、あなたが聴いている音楽は、ごく限られた範囲のものです。音楽は国や地域によって実にさまざまな特徴があり、世界にはあなたの知らない音楽がまだたくさんあるのです。
例えば、東ヨーロッパには、専門チャンネルで一日中ミュージックビデオが流れるほど人気の大衆音楽があります。ブルガリアでチャルガ、ルーマニアではマネーレと呼ばれていて、ビートの効いた複雑なリズムに乗せ恋愛やお金にまつわる物語を歌手がこぶしを回して歌い上げる様子は、日本の演歌に通じるものがあります。

東欧の大衆音楽の変遷

この地域の大衆音楽は、結婚式などイベントで、ミュージシャンを招いて演奏を聴きながら大勢で歌い踊って楽しむものでした。ミュージシャンはいわゆるジプシー(ロマ)と呼ばれる人たちです。これは昔、人々が教会によって楽器の演奏を禁じられたため、異教徒であるジプシーにお金を払って演奏させていた名残です。
社会主義崩壊後の1990年代には、東ヨーロッパにも西側の音楽が流れ込んできました。その影響を受け、マドンナやマイケル・ジャクソンも流行しましたが、一方で大衆音楽と西洋ポップスとが融合した新しいジャンルが生まれました。

音楽の向こうに見えてくるもの

音楽は太古から暮らしの中で育まれ、人々に共有され変化を遂げてきました。音楽について考察すると、背景に政治や宗教、民族性など多様なことが見えてきます。音楽を研究することは、人間の本質を知ることにつながるのです。
インターネットで世界の情報が簡単に手に入る時代ですが、もしかしたら今あなたが好きで聴いている音楽は、メディアや日本の文化的な枠組みの中で用意された情報から選ばされているものなのかもしれません。音楽の楽しみ方をまずは疑ってみるのもよいでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 文学部 音楽学・演劇学専修 教授 伊東 信宏 先生

大阪大学 文学部 音楽学・演劇学専修 教授 伊東 信宏 先生

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音楽学

メッセージ

大阪大学音楽学研究室は、全国でも珍しい文学部の中で音楽を対象とする研究室です。ここで学ぶ条件は、「楽器が弾けること」ではなく、ただ「音楽に関心があること」だけでよいのです。あなたが周囲の人に「音楽の道に進みたい」と告げると、「もっと役に立つことをしなさい」と忠告されるかもしれませんが、気にしなくていいです。音楽を入り口に人間について考える音楽学は、とても奥行きのある学問です。私自身この道に進んだことを一度も後悔したことはありません。「音楽について考えたい」という気持ちをぜひ大切にしてください。

大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。