ミッションを背負って極限環境へと旅立つ 宇宙ロボットの開発

ミッションを背負って極限環境へと旅立つ 宇宙ロボットの開発

宇宙開発の未来に必要な「宇宙ロボット」

JAXA(宇宙航空研究開発機構)や民間企業によるロケットの打ち上げが話題になっているように、宇宙開発は日々進歩しています。この先に必要とされているのが、人間の代わりに宇宙で作業をしてくれる宇宙ロボットの開発です。
宇宙開発で必要とされているのは、国際宇宙ステーションの外で作業するロボットアームや、月・惑星に降り立って移動したり、鉱物を採取できる探査ロボットです。特に、地球から遠く離れた天体で無人で活動するためには、自ら周囲を認識して判断し、粘り強くミッションをやり遂げる「タフでしなやかな」ロボットが重要です。

地球と異なる極限環境で必要なこと

ロボットアームなど多くのロボット技術は地球上で既に実用化されていますが、地上と異なり、過酷で特殊な宇宙環境で動作するためには、さまざまな工夫が必要です。
まず、宇宙空間には重力がありません。例えば、重力が地球の数万分の1という小惑星では、ちょっとした段差でも跳ね上がってしまい、きちんと移動することが困難です。また、空気がない天体では、プロペラで飛ぶという機構も利用できません。さらに、宇宙空間では熱や放射線を遮るものがなく、機器へのダメージが大きいという制約もあります。ロケットに搭載して打ち上げるときの大きな振動にも耐える頑丈さも必要です。

目的に応じたさまざまなロボットの開発

現在、微小重力環境や過酷な自然地形を想定したロボットの機構や力学、制御など、基礎的な研究を進めながら、宇宙ゴミの回収や、月・惑星の表面探査など、目的に応じた宇宙ロボットの開発が進行中です。中でも、月や火星の縦孔や溶岩洞の壁面をつたって探査する「フリークライミングロボット」に注目が集まっています。このロボットは、スパイダーマンのように天井を歩くこともできます。
宇宙環境を地上で完全に再現はできませんが、部分的に低重力状態を模擬して実験するなど、「確実に動く」ことを検証しながら開発が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

九州工業大学 工学部 機械知能工学科 教授 永岡 健司 先生

九州工業大学 工学部 機械知能工学科 教授 永岡 健司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

宇宙ロボット工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今、高校生の時点で将来何がやりたいかわからなくても、大学に入ってから決めても十分に間に合います。部活動でも趣味でも、今目の前にあることに120%の力で熱中できる人は、そのときどきで自信を持った選択ができ、どの分野でもしっかりと歩んでいけます。現代は情報に溢れかえっていて、自分は何がやりたいかをじっくり考える余裕も少なく、提示される無数の選択肢から選ぶことに慣れてしまいがちな世の中です。だからこそ、「選ぶ」のではなく、自らの頭で考えて自分の中から「ひねり出す」ことも意識してみましょう。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学は前身である明治専門学校の開校(1909年)以来、「技術に堪能(かんのう)なる士君子」の養成を教育理念に掲げ、品格と創造性を有した高度技術者・先導的研究者を育成しています。工学部・大学院工学府では学生フォーミュラー大会出場や有翼ロケット打上げ実験、小型人工衛星開発などの学生課外活動が盛んで、PBLなどの講義とあわせて実践力・応用力の強化に力を入れています。また国際交流協定校や海外インターンシップへの派遣を通じてグローバル人材育成にも注力しており、非常に高い就職率に結びついています。