認知症の患者と作業療法
認知症になった、さあどうなる?
認知症と診断された患者には、食事やトイレを中心とした生活のリハビリテーションが始まります。医師や看護師らと連携した作業療法士(OT)が、日常生活を動作面からサポートします。医療のチーム制度により、患者はもちろん、家族の心理的・肉体的負担が軽減されるわけですが、その前提として、認知症という病気を正しく理解する必要があります。
認知症の種類と必要な医療
認知症は決定打になる治療法がまだ足りない、進行性の病気です。アルツハイマー病などの変性型の認知症だけでなく、脳梗塞による血管性の認知症など、複数のタイプがあります。脳や神経に関わる病気であることはわかっていて、研究はまだまだ進むでしょう。認知症というとすぐ思い浮かべるのが物忘れや徘徊(はいかい)ですが、これは初期段階の症状であり、常に必要なのは、記憶障害や味覚障害といった、日常生活の質を低下させる症状への対策です。進行を抑えるための薬も開発されてはいますが、日常生活を維持回復させていく「作業療法」によるリハビリテーションは欠かせません。
患者の日常生活をサポート
作業療法とは、患者一人ひとりに対してオーダーメードで行う医療です。例えば、食事がうまく取れない原因は、スプーンが握りにくい、食べたことを忘れているなど、個人によって違います。作業療法では、握りやすい太めのスプーンを使うことや、家族が食べた記録をノートにつけて本人にも見せるなど、器具やアイテムを提案することが多くあります。一見簡単なようですが、そこには専門知識が必要です。食べ物を飲み込みにくくなる傾向はほとんどの患者に見られ、喉を詰まらせないためにゼリー状の食事をアドバイスします。作業療法の一環で、家の間取りや動線も検討し、より良い環境を整えて、住み慣れたわが家で落ち着いて暮らせるようサポートしていきます。医学的な研究の進展と、生活そのものを改善していくリハビリテーションは、認知症に対応する上での両輪だと言えるでしょう。
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