地中送電ケーブルの劣化メカニズムを解明する
地中送電によるケーブルの劣化現象
私たちが使っている電気の多くは、空気中に張り巡らされた電線によって配られています。しかし、こうした地上での送電(架空送電)は、景観を損なうとともに、人口が過密になればなるほど設置場所の確保が困難になるため、近年では地中にケーブルを埋める地中送電が採用されるようになってきました。
しかし、地中送電にも問題があります。それは、電気を通す銅線を包むプラスチックの絶縁体が、地中の湿気や高電圧によって、特有の劣化を引き起こすことです。この劣化の形態として、「電気トリー」、「水トリー」が知られています。
水トリー劣化のメカニズムを解明する
水トリーは、水(湿気)と電気(特に電圧)が劣化の主な原因ですが、劣化のメカニズムはまだ十分に解明されていません。周囲の温度、電圧の波形がどのように劣化に関係するのかなど、明らかにするべき課題は少なくありません。
さらに、技術の発達によって、水トリーの発生・進展が加速する可能性も指摘されています。例えば、直流を交流に変換する「インバータ」は、省エネ効果を高める方法として家電製品でも採用が進んでいますが、その仕組み上、電圧が瞬間的に通常の2倍になったり、電圧の波形が不安定だったりするため、水トリーの発生・進展を加速させている可能性が否定できません。こうした技術革新にともなう新たな課題にも取り組まなければなりません。
さまざまなエネルギー源に対応する
現在、電気をめぐる環境は、複雑で重要性を増しています。テクノロジーの進歩には目覚ましいものがあり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの開発も盛んになってきました。しかし、忘れてはいけないのは、電気は発電するだけでは役に立たず、必ず送電する仕組みが必要だということです。発電方法が変われば、送電の安全性にも何らかの影響が出るのです。
送電の安全性を高める基礎研究として、絶縁体の劣化の解析はますます重要になっています。
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