分子性物質の新機能! 「柔・軽・薄・短・小」な材料をつくる
分子性物質とは何か
「分子性物質」とは、大まかにいうと非金属元素からなる分子で、分子間に働く力によってゆるく凝集して固体になっている物質です。防虫剤として使われるナフタレン、鉛筆の芯に使われる黒鉛(グラファイト)、有機ELの材料など、有機系の化合物(炭素を含んだ化合物)が分子性物質の一例です。かつては、有機系の物質が電気を通すなど金属と同じ性質を持つことができるとは考えられていませんでした。熱や圧力などの条件次第で、金属のように電気をたくさん流すことができるようになったり、磁石のように磁性を持たせることができたりと、近年、新しい機能が発見されています。
通常の状態では電気を通しにくい物質で超伝導を
有機系の分子性物質に電気が流れる性質を付与する研究は、いろいろな素材で研究されています。例えば、グラファイトにアルカリ金属を添加し超低温にすると、電気抵抗がゼロになる超伝導が起こることが発見されました。また、アントラセンというコールタールから抽出される物質に、ほんの少し電子を与えたうえで圧力をかけ、徐々に電気を流す研究も行われています。さらに、電気的な特性だけでなく、有機系物質に磁性を持たせて磁石をつくれる可能性もあります。
分子性物質で通電できれば電子部品が軽くできる
分子性物質に導電性を持たせることができれば、今、金や銅など金属材料で半導体チップを配線している電子部品を、有機系の分子でつくることができるようになります。有機系の分子性物質は金属よりも格段に軽いことから、製品自体が、薄く、小さくなり、機器に柔軟性を持たせることができ、重量も軽くなります。例えば50型のテレビであれば、今の1/5~1/6くらいの重さになる試算があります。製品が小さく、軽くなるということは、製造から運送、廃棄まで、製品のライフサイクルを通してかかるエネルギーが少なくなり、エネルギー問題の解決や二酸化炭素排出削減に貢献できると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪工業大学 工学部 環境工学科 准教授 平郡 諭 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
工学、化学、物理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?