水素とバイオ燃料を使ったCO₂排出ゼロのエンジン開発
エンジン車と電気自動車の環境負荷
カーボンニュートラルが広まりつつある現在、化石燃料を使うエンジン車は環境に悪く、将来的にはすべての車が電気自動車(EV)になると考える人もいます。しかし、EVの低環境負荷というイメージは、主にユーザーが利用する際の状況に基づくものです。資源採取から生産、流通、廃棄、そしてリサイクルまでのライフサイクル全体の環境負荷を評価する「LCA(ライフサイクルアセスメント)」の視点で見ると、EVはエンジン車より環境負荷が高くなる可能性も指摘されています。そのため、化石燃料とほかの燃料を合わせることで環境負荷を下げる車や、カーボンニュートラルな燃料を用いる車、カーボンフリーな水素を燃料とする車など、CO₂削減をめざすエンジンの研究も続けられています。
環境負荷の低いエンジン開発
しかし水素エンジンには、エンジン自体や水素燃料のコストが高いことや、「プレイグニッション(早期のタイミングで着火する現象)」など、実用化にはいくつかの課題があります。ほかにも、環境負荷が低いエンジンの研究として、天然ガスと軽油を混合燃焼させる「DDF(ディーゼルデュアルフューエル)」エンジンの存在があります。しかし、CO₂の削減効果が小さいため、CO₂排出ゼロをめざして、バイオ燃料と水素を組み合わせたDDFエンジンの開発が進められています。
CO₂排出ゼロのエンジンを
DDFエンジンは、これまで以上にエンジンの熱効率が向上し、低燃費も期待できる技術です。しかし、100馬力のDDFエンジンは、その全出力を出している時は高効率で稼働しますが、50馬力に出力を下げるとその高効率が保てないばかりか、排ガスが悪化する特性があります。そのためDDFエンジンは、自動車よりも発電機などの一定の出力で使用する原動機に適していると考えられています。この研究を踏まえて、今後は普段はバイオ燃料のみで稼働し、高速走行やパワーが必要な時にブースターとして水素を使うタイプのDDFエンジンの開発が検討されています。
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関東学院大学 理工学部 先進機械コース 准教授 武田 克彦 先生
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