GPSの位置情報を活用した安全な交通システムの研究
位置情報をやり取りして危険を警告
スマートフォンの地図や自動車のナビゲーションシステムでは、今自分がいる位置がわかります。これには複数の人工衛星からの発信電波を受信して位置を計算する「GPS(全地球測位システム)」が使われているのですが、この位置情報を安全・安心な交通に役立てる研究が行われています。自動車向けの自動運転や安全運転支援システムの実用化は進んでいますが、歩行者と自転車の事故を防ぐなど、交通弱者に向けた取り組みも重要なのです。
例えば、死角からの接近を無線通信を用いて警告するシステムの研究があります。車などが直接電波を送受信する手法のほかに、最近の回線の高速化や低遅延化により、車やバイク、自転車、歩行者などが持っているスマートフォンの位置情報を、携帯電話回線で数100ミリ秒以下の遅延で互いに通信し合えることも確認できています。
GPSの位置情報を補正し精度を上げる
GPSの位置情報は、ビル街では電波の遮蔽や反射を行う障害物が多く、精度が悪くなることがよくあります。間違った位置情報を交通システムに利用すると危険なため、情報の精度を上げる研究も数多く進められています。
その一つが、路面の凹凸の情報を位置情報の「補正」に使う方法です。舗装の継ぎ目や横断歩道などの塗装の盛り上がりを場所ごとに記録して、車が「路面の状態」を検知して自分の位置を知り、GPSの位置情報と照らし合わせるシステムが研究されています。
災害時の安全な避難経路を共有するアプリ
位置情報は、災害時の避難誘導にも役立ちます。災害時には、予測外のことが起こって最短の避難ルートが通れなくなることがあります。そこでGPSの位置情報を使い、先に避難できた人の移動経路のデータを収集して共有できるアプリの開発が進められています。年齢や足腰が悪いなどの身体的条件や、地元住民かそうでないかなどのユーザー情報を登録しておき、どんな人がどの経路を通って避難したかを共有することで、「自分にとって安全な避難経路」を知ることができるのです。
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関東学院大学 理工学部 理工学科 情報学系 准教授 永長 知孝 先生
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