モーターの性能を落とさず耐久性を上げる、材料のパズル

モーターの性能を落とさず耐久性を上げる、材料のパズル

自動車の中で活躍する数百個のモーター

EV(電気自動車)ではない、ガソリンや軽油で走る自動車にも、一般的な小型車で1台あたり50~100個、高級車には200~300個のモーターが搭載されていることを知っていますか。ドアミラーを動かす、パワーウインドウを開閉する、発電してバッテリーを充電するなど、さまざまな箇所でモーターが活躍しています。それらの耐久性を高めれば、故障や部品交換の頻度が抑えられ、自動車そのものの長寿命化にもつながります。

「新型」が登場しても「従来型」は重要

中学校の授業で直流モーターの構造について学んだと思いますが、モーター内に「整流子」と「ブラシ」という接点があります。この2つは常に接触し、回転によって摩耗し続けます。近年、摩耗する接点を持たない「ブラシレスモーター」が普及しつつあるものの、製造コスト面などから、従来型のモーターでなければならない部品や装置が数多くあります。例えば自動車の場合、全モーターをブラシレスに置き換えると、製造価格が10倍近く跳ね上がります。また、発電所で使うような大型発電機はブラシレスでは代替できません。そのため現在でも、従来型モーターの耐久性を高める研究は重要なのです。

まるでパズルのような、最適比を求める実験

耐久性を高める研究で以前から取り組まれているのが、材質の見直しです。ブラシの材料は黒鉛をベースにするのが一般的でしたが、そこに銀粉や銅粉などを少し混ぜることで、摩耗や通電の特性が変化します。また、火力発電所などに用いられる交流発電機などでは、ブラシと擦れ合うスリップリング(整流子)を銅から鉄に変えて、耐摩耗性を高める研究も行われています。
通電性が落ちたり回転軸が偏ったり摩擦熱による変形が大きかったりすると、耐久性が高まってもモーターとしての性能が低下することになります。材質変更の「最適比」を求めるための実験が、メーカーや大学などの研究機関で繰り返されています。

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帝京大学 理工学部 機械・精密システム工学科 助教 福田 直紀 先生

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電気工学、電気機械工学、メカトロニクス

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メッセージ

「遊び心」を持つことは、勉強と同じくらい大切なことだと思います。教室の中でも外出した時でも、遊び心を持っていればいろいろな気づきがあるからです。例えば、私の専門分野であるモーターなら、あらゆる機械の中でたくさんのモーターが動いていますが、外から見える場所に設置されているケースはほとんどありません。「どこにモーターが隠れているか、想像してみよう」といった遊び心がなければ、存在そのものに気づかないでしょう。遊び心を持って物事を見れば、知識量も増えてくるはずです。

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帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。